『2型糖尿病』は存在しない[17]米国人と中国人の分析結果

スウェーデンのAhlqvist博士の提唱した糖尿病の新分類は,従来2型糖尿病とひとくくりにされていたものが,実は4種類の異なる病気であることを示しました.

特にその中の一つ,SIRD(=重度インスリン抵抗性糖尿病)を呈する人は,従来の『糖尿病に強く関連する遺伝子』をまったくもっておらず,膵臓機能はむしろ健全であることから,これはもはや糖尿病とはまったく別の病気ではないかとも考えられます.

さらに生粋のスウエーデン人と,スウエーデンに移民したイラク出身の人とを比較すると,それぞれのパターンの発生率に違いがあることがわかりました.

そこで,当然注目されるのは,世界各国において,Ahlqvist新分類の発生率は人種によって異なるのかどうかという問題です.

2018年にAhlqvist博士が論文発表して以来,世界各国で 博士が用いたクラスター解析法(Data-driven Cluster Analysis)により調査が進められています.
このブログ記事を書いている間にも,それらの結果発表が多くなってきました.

米国人と中国人では

中国の糖尿病患者データベース(China National Diabetes and Metabolic Disorder Study: CNDMDS)と,米国のの糖尿病患者データベース( National Health And Nutrition Examination Survey: NHANES III)から,データの揃っている患者データを抽出して,Ahlqvist博士と同様の手法で,クラスター解析を行った結果が発表されています.

Novel subgroups of patients with adult-onset diabetes in Chinese and US populations

その結果が下の通りです.
なお,米国・中国とも 1型糖尿病の目安であるGAD抗体の有無を調べた例は少ないので,ここでは 従来の2型糖尿病に相当するもの(GAD抗体=陰性)だけを調べています.

意外にも,米国人全体と中国人は似たような分布です.
中国人は人種的には日本人に近いはずですが,日本人もこういうパターンになるのでしょうか.

人種別では

しかし 米国は多民族国家ですから,米国人といっても多様です.そこで米国の 白人(非ヒスパニック),黒人,メキシコ系(ヒスパニック)白人 別に集計すろこうなりました.

やはり非ヒスパニック(アングロサクソン・ゲルマンなどのコーカサス系)白人は,スウェーデン人に近い分布になりました. しかし 同じ白人でも,ラテン系のヒスパニック白人は,かなりパターン分布が異なることがわかります. ヒスパニック系の人というと,肉づきがよくてSIRDMODが多いのかと思っていたら,むしろ逆のようです.一方 非ヒスパニック白人と黒人とはほぼ同じでした.

やはり人種によって,つまり遺伝子によって左右される要素は大きそうです.

[18]に続く

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