肝機能指標と糖尿病[ご質問について-1]

長いシリーズでしたが,今回も多くの方からご意見をいただいております.糖尿病というと,どうしても膵臓,次いで腎臓や眼ばかりに話が向きがちなのですが,実は肝臓こそ,消化管と膵臓のすぐ近くにいるのですから

ご近所つきあい

注意したほうがいいでしょうという意図で,このテーマをとりあげました.

もっとも多かった質問は

肝機能の数値がすべて正常でも AST/ALT比が1未満なら危ないのか?

というものでした.

この記事で;

AST,ALTの数値はどちらも低く,
しかも
AST > ALT

が望ましいと書いたのですが,これは 『AST, ALT,GTPの3つが基準内にスレスレでも収まっているから大丈夫』と思わないでください,というつもりでしたが,たしかに記事をざっと読むとそういう印象をもたれてもしかたがないですね.

基準値とは

たとえば ある肝臓の検査値の分布と,それに対して 基準値がこう定められていたとします.

私の意図としては,この図の★印の人は,『すれすれだが基準値内だから大丈夫だ』と安心せずに,AST/ALT比も含めてみた方がいいというつもりでした. そもそも,AST,ALT,GTPは医療機関によって基準値が(特に 上限が)バラバラだといっていいほど異なります. その理由は,こういう分布をしているので,明確に『ここまでは正常,ここからが異常』という線は引けないからです.
したがって,同じ基準内にあるとは言っても ★の人と ◎の人とでは,どちらが安全か明らかです.

基準値 = 正常値 ではありません

しかも 肝臓の場合 基準値上限は 上記のように かなりあいまいなのですから,なるべく基準範囲の低いほうで【※】,かつ AST/ALT比が1を上回っているのが理想的でしょう. ただ,1回だけの検査値で一喜一憂するのではなく,検査結果を保存しておいて,横軸を年単位にしたグラフで傾向」を冷静に判断した方がいいと思います.

【※】 ただし 数値が非常に低く基準下限をはるかに下回っている場合は,肝硬変などで 正常な肝細胞がほとんどなくなっていることを意味します. 肝細胞の数が少ないので,そこに含まれている酵素も出てこなくなったのです. ですから,低ければ低いほどよい,というわけではありません.

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