『2型糖尿病』は存在しない[22] 4色パレット

Ahlqvist博士が,従来の1型/2型糖尿病ではなくて,あらたに5つの分類を提案した時に,世界の糖尿病臨床医学界から出た異論で多かったのは;

  • 糖尿病は,特に2型糖尿病は 患者ごとにまったく病態が多様である.
  • したがって,ひとりひとり丁寧に患者の症状を見て その都度 治療法を考えるしかない.
  • それなのに2型糖尿病は4種類の治療法だけでいいというのは乱暴な単純化だ.

というものでした.

この異論に対して,先月に発表されたこの論文で;

(C) ADA

博士が非常にわかりやすく答えています.

Ahlqvist博士の回答

従来の糖尿病の分類の考えはこうでした.

(C) ADA

糖尿病は,主として1型と2型である.
ところが,糖尿病の高血糖症状や合併症を発生させる経路(Pathway)は無数に存在する.

(C) ADA

しかしだからと言って,その無数のPathwayのそれぞれに応じた治療法を開発することなど不可能である.

今回のData-driven Cluster Analysisで 発症初期の少数の指標を用いて,その患者の主要な発症機構と合併症進行の予測が おおまかに予測できるとわかった.
すなわち 個々に見れば無数の色があるのは事実だが,どの色が強いのかで4色のパレットに分けられることが判明した.

(C) ADA

したがってほとんどの患者の将来の合併症リスクを 的確に予測して早めに手が打てるのだから,この方が臨床的意義が大きい.


Ahlqvist分類に対する 日本の糖尿病専門家の態度は,どうも少し引いたようなところが見受けられます.それは,博士のData-driven Cluster Analysis という数学的手法ばかりに目を奪われて,何か統計的な議論をしているのだろうと思っているからでしょうか. しかしそうではなくて,Ahlqvist博士は,直ちに実利が得られる具体的な提案をしているのです. そこで次回は,Ahlqvist博士の この提案と,日本糖尿病学会の推奨する治療戦略とを比較してみます.

[23]に続く

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