グルコキナーゼ[6] 糖尿病ではどうなるのか

  • グルコキナーゼは,血糖値を一定に保つためのセンサーの役割を果たしている
  • グルコキナーゼの活性が低下すると 血糖値が高くなっても感知できなくなる

これがここまでの話でした.
では糖尿病とグルコキナーゼとの関係はどうなのでしょうか. グルコキナーゼの活性が低下すれば,それは必ず糖尿病に結びつくのでしょうか.

答えはYesです. それは2つの根拠から確認されています.

遺伝性糖尿病

根拠の一つは遺伝性糖尿病の知見です.

若年発症成人型糖尿病:MODY(=Maturity Onset Diabetes of the Young)という糖尿病は,その名前の通り 若年で発症する糖尿病なので,1型糖尿病と誤診されやすいものですが,完全に遺伝子異常により発症することが確認されています.

原因となる遺伝子の違いによって,MODYにも14種類が存在しますが,その内 MODY-2はグルコキナーゼ遺伝子の異常が原因であり,軽度の耐糖能異常を示します.

MODY-2は空腹時の血糖値がやや高いのですが,食後血糖値や糖負荷試験後の血糖値上昇が異常に高くなることは稀です. なぜなら,インスリン分泌自体は阻害されておらず,ただインスリン分泌が始まる血糖値(=閾値)が高くなっているだけだからです. まさに このことは グルコキナーゼの『目盛りがズレた』ことを示しています.

糖尿患者のグルコキナーゼ活性

もう一つの根拠は,糖尿病患者と非糖尿病の人とで.実際に肝臓のグルコキナーゼ活性を実測したデータです.

調査したのは.[肥満で糖尿病の人]/[肥満だが糖尿病でない人]/[肥満でも糖尿病でもない人]の3パターンのグループです.

Caro 1995 Table 1を翻訳

実際に肝臓組織を生検して,肝臓細胞のグルコキナーゼの活性を測定した結果が報告されています.

Caro 1995 Fig. 1を翻訳

糖尿病でない人は,肥満でも 非肥満でも,グルコキナーゼの活性に差はありませんでした.しかし肥満で糖尿病の人は,グルコキナーゼの活性が 平均値で半分くらいしかなかったのです.

注目すべきは.肥満で糖尿病の人の半数近くでは,そのグルコキナーゼ活性が非糖尿病の人の最低値よりも更に低かったことです.


以上のことから,グルコキナーゼの活性低下は糖尿病の原因となりうることは確実なようです.

すべての糖尿病がこのパターンであるとは限りませんが,『インスリン分泌能力はあるのに,血糖値に対応してインスリン分泌が始まらない』というパターンはグルコキナーゼが原因である可能性が高いでしょう.

[続く]

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