日経メディカルに『糖尿病医療費を適正化するための薬剤選択とは?』という記事 が掲載され,その記事中で『糖尿病医療費は,都道府県によって大きな開きがある』と厚労省が主張しているとのことでした.
この資料です.
厚労省:医療費適正化基本方針の改正・医療費適正化計画について
この厚労省の書類を見ると,p.35「糖尿病(40歳以上)の人口一人あたり医療費」というグラフがあり,
もっとも多い広島県が約32,500点,もっとも少ない京都府が約17,000点と,たしかにほぼ2倍の開きがあります.
保険点数は1点=10円なので,広島県ではすべての県民が一人あたり325,000円の「40歳以上の糖尿病の人のためだけに」を負担していることになりますが,いくら何でもそれはおかしいので,この金額は県内の『糖尿病人口一人あたり』という意味でしょうね.
しかしそうだとしても,都道府県によって医療費が2倍近く違うというのは聞き捨てなりません.
糖尿病の治療は,ガンなどは違って,手術を行なうわけでも.また重粒子線など先端医療があるわけではありません. MRIやCTなどの高価な検査もありません.基本的には血液検査と投薬(インスリン,経口薬)がそのほとんどで,それに入院費用,透析費用などでしょう.
処方件数からご当地事情を調べてみると
そこで,厚労省が医療機関からの保険診療レセプトデータを詳細に開示している『NDB OpenData 』 から膨大なデータをダウンロードして集計してみました.このデータベースには 各都道府県から送られてきた処方実績が用途別に集計されています.集計単位は処方箋の1件あたりなので,その単位は,内服薬なら1錠,注射薬なら1キット,そして透析などの処置も1件となります.内服薬は,年間48億錠も処方されていることがわかりました.
さらに 同じく厚労省の患者調査 から 糖尿病患者の都道府県別データを得ました.
以上のデータから,各都道府県別に患者千人あたりの数量集計するとこうなりました.
これを見ると,総医療費が多いとやり玉にあげられた,広島,三重,和歌山などは,件数ベースで見ると,必ずしも多い県ではありません.
不思議な共通点
逆に秋田・高知・宮崎や,東京・千葉・神奈川 と,一見不思議な取り合わせが,件数の多い県になっています.
この組み合わせを説明するために,各都道府県の高齢化率(65歳以上が総人口に占める割合)と,投薬量をプロットしてみたら,こうなりました.
横軸が各県の高齢化率(%),縦軸が患者千人あたりの件数です.
高知,秋田など,高齢化率の高い県では,投薬件数などが多くなり,逆にもっとも『若い』沖縄では,投薬数量が少ないのはうなずけるところです.
ところが首都圏の神奈川・東京・千葉では,それよりも高齢化率が高い県よりも明らかに件数が多く,高齢化県と同じくらいです.
最初の予想では,「高齢化→糖尿病発症率が高く,かつ投薬なども多くなる」と予想したのですが,少し意外な結果でした.
ただ,これは 薬1錠も,注射 1キットも,一回の透析も,すべて「1件」と数えるからこうなるのかもしれません. そこで次回は金額ベースで検討してみます.
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