第66回日本糖尿病学会の感想[15] イメグリミンでHba1cがすぐには下がらないのは

【この記事は 第66回 日本糖尿病学会年次学術集会を聴講した しらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】

イメグリミンは投与開始してもすぐには効いてこない.3~4か月かけてじわじわとHbA1cが下がってくる

という,まるで『だんだんよく鳴る法華の太鼓』のようだという評価が固まりつつあるようです.

しかし,この点に関して 面白い発表がありました.

3-136-2 イメグリミンは緩徐に血糖コントロールを改善する薬剤か?

イメグリミンの投与直後にHbA1cがなかなか下がらないのではなくて,そう見えるのに過ぎないのだ,という発表です.

たしかにイメグリミンの投与前後にリブレで観測すると,血糖値はストンと下がっていましたから,HbA1cが下がらないのは矛盾しています.

そこで,この報告ではイメグリミン投与開始後,HbA1cとGA(グリコアルブミン)の変化を同時に追跡しました.

平均 HbA1c=8.1%,平均 BMI=24.5の46例の結果では;

この図は 発表のスライドそのものではなく,手書きスケッチしたイメージですから正確ではありません

投与後1ヶ月で すぐにGAは下がっていたのです.
通常 HbA1c/GAの比率は,同じ人であれば一定ですが,時にこの比率が変動することがあります.

そこで,対象者の血液検査結果と突き合わせて比較したところ,以下の傾向がありました.

  • 投与直後に MCVは有意に上昇
  • 逆にMCHCは有意に低下
  • そして MCHは不変

MCV(Mean Corpuscular Volume)とは 赤血球の平均的な大きさであり,MCHC(Mean Corpuscular Hemoglobin Concentration)は,赤血球中の平均ヘモグロビン濃度です.

また MCH(Mean corpuscular hemoglobin)は 赤血球1個あたりの平均ヘモグロビン量を表します.

これらは,血液検査での赤血球数,ヘマトクリット値,ヘモグロビンから下記式で算出されます.

MCV(平均赤血球容積)
 [ヘマトクリット値(%)÷赤血球数(106/mm3)]×10
 
MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)
 [ヘモグロビン(g/dl)÷赤血球数(106/mm3]×10
 
MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)
 [ヘモグロビン(g/dl)÷ヘマトクリット値(%)]×100
 

この式からわかるように,MCVが高くなり,MCHCが低くなる,そしてMCHが不変となるのは,赤血球数とヘモグロビンが同時に低下し,ヘマトクリットが不変の場合だけです.

これは(貧血や体内での溶血・出血が発生したのでなければ) イメグリミンにより(その機序は不明だが)一時的に新しい赤血球が作られにくくなって,古い赤血球の割合が高くなった,したがってその分だけ『見かけ上HbA1cが実際よりも高く見えている』に過ぎないのではないか

という結論でした. これは面白い視点です.しかもイメグリミン投与の直後から血糖値はたしかに下がっているのに,HbA1cはしばらくの間下がらないという矛盾をうまく説明できています.

他の病院でも,あるいは住友ファーマ社でも,この推定が正しいのかどうか調べてほしいですね..

[続く]

コメント

  1. 西村典彦 より:

    >新しい赤血球が作られにくくなって

    もしこの仮説が正しいとすれば糖化ヘモグロビンは通常よりも長期間滞留することになり、同じHbA1c値を得るには、より血糖値を下げないといけなくなりますが、そうなのでしょうか。
    もしくは古い赤血球は通常と同じ速度で排除されるとすれば貧血にはならないのでしょうか。
    貧血以外にも赤血球が作られにくくなることによる副作用なないのかが気になりますね。古い赤血球が多くなって酸素や栄養の運搬能力が落ちるとすれば認知症などの懸念も考えられます。

    • しらねのぞるば より:

      記事中の GA/HbA1c比グラフの通り,この現象は一時的なものです.
      また報告者によれば,DPP-4阻害剤投与でも 同じような現象がみられるようです.