第66回日本糖尿病学会の感想[14] イメグリミンの実臨床症例報告

【この記事は 第66回 日本糖尿病学会年次学術集会を聴講した しらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】

前回記事は,過去に行われたイメグリミンの治験データを事後的に(post-hoc)再解析した 住友ファーマ株式会社からの報告でした.したがって新たなデータが得られたというわけではありません.

それに対して,国内の多くの病院で実際の糖尿病患者へのイメグリミン投与が始まっており,その実臨床報告も相次いでいます.

もっとも住友ファーマ株式会社が共催するランチョンセミナーに出席してみたら;

現在イメグリミン500mg錠への注文が殺到しており,出荷が間に合っておりません

という平謝りの掲示が出されておりました. どうも多くの病院が一斉に発注したため生産が追い付かず,現時点では 既に受注した分だけの限定出荷になっているようです.

3-134-2 イメグリミン投与122例における12ヵ月間の治療効果と安全性に関する検討

2型糖尿病で,新規にイメグリミンを投与開始した77例,既に他の薬物を投与していたが,イメグリミンに切り替えた45例,合計122例の12ヶ月後の結果です.

投与前の全体平均は,罹病期間 11.5年,BMI=23.5,HbA1c=7.2%です.
新規投与群では投与前→12か月後で,HbA1c=7.29 → 6.32%に,他薬剤からの切り替え群ではHbA1c=7.08 → 6.46%と,ほぼメーカー発表の治療効果を裏付けました.
また GLP-1受容体作動薬を服用していた人でも,HbA1cは下がったとのことです.

副作用の種類や発生率もほぼ既報通りでしたが,メトホルミンで消化器症状が出る人は,イメグリミンでも出やすい傾向があったようです.

一方でこういう報告もありました.

3-134-3 メトホルミンからイメグリミンへ切り替えた際の有効性・安全性について

それまでメトホルミンを服用していた2型糖尿病の人8名(男/女=6/2)をイメグリミンに完全に切り替えた実例です.
平均年齢=67.8歳,平均体重=65.1kg,平均HbA1c=8.0%,メトホルミンは 500~1500mg/日 でしたが,全員 最初から 1000mg×2回/日のイメグリミンに切り替えました.

ところが2ヶ月経過した時点では,平均HbA1cはまったく下がりませんでした(上がってもいないが)

そこで上記の内4例のみ,メトホルミンからの切り替えではなくて,メトホルミンに追加してイメグリミン投与としてみたところ,3ヶ月後にHbA1cは 7.9 → 7.3%に低下しました.

イメグリミン投与にあたり,既にメトホルミンを服用していた人はどうするのがよいか,各病院でも試行錯誤が続いているようです.

3-135-5 Imeglimin使用経験からみえてくるもの

2型糖尿病の人66名の症例報告です.
投与前時点で,平均 HbA1c=7.97%, 平均 BMI=23.6,平均 CPI= 1.38でしたが,これにイメグリミン 1000mg/日 又は 2000mg/日を追加投与しています.
投与後1~2ヶ月で,HbA1cは 平均8.01%から 7.8%とわずかな低下,3~4か月後で 7.47%にまで低下しました.

イメグリミン投与にあたり,それまでのメトホルミンを減量又は中止した人もいましたが,報告者の意見では 結果を見ると,どうもメトホルミンとイメグリミンは併用した方が良さそうだとのことでした.

[続く]

   

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