最新の糖尿病薬:イメグリミン[3] ミトコンドリア機能を改善

ラットを用いた動物実験ですが,イメグリミンには

  • (1) 血糖値・HbA1cが低下
  • (2) 耐糖能が改善
  • (3) インスリン分泌能が増大
  • (4) 肝臓での糖新生を抑制
  • (5) 筋肉の糖取り込み量増加
  • (6) 高血糖下でインスリン分泌増加

という効果を発揮する可能性があることが示されました.

ただし これらの内,(4)(5)はインスリン抵抗性にかかわるものであり,また(1)(2)[※]も,イメグリミンの大先輩のメトホルミンでもみられるものです.

[※] メトホルミンというと,インスリン抵抗性改善薬という印象が強いですが,実は空腹時血糖値やHbA1cの低下効果は結構強力で,DPP-4阻害薬と同等かそれ以上なのです.

しかし,(3)(6)には驚きます.メトホルミンがインスリン分泌を増やすという報告は 過去 全く存在しません.
そして,このように多彩な機能が発揮できるのは,

(イメグリミンは) 2型糖尿病の発症に関与している「膵臓・肝臓・骨格筋」のミトコンドリアに作用し、

大日本住友製薬(株)

と説明されています[下記 大日本住友製薬 解説より].

301 Moved Permanently

そもそもミトコンドリアって

ミトコンドリアを そもそも論からやりだすと1年以上かかりそうです.
そこで御用とお急ぎの方にピッタリの解説書が 最近出版されています.

田中文彦『忙しい人のための代謝学』
(C) 羊土社

堅苦しい医学書ではなく,ミトコンドリアについて 要領よく説明してくれる名著です. ミトコンドリアの基礎については,私の怪しげな説明ではなく こちらをお読みください.
本文は丁寧な記載で,たとえば 登場する基質は,原則として 略号(ATP)や名称(アデノシン3リン酸)だけでなく,その化学式まで表示してくれているので,化学系出身の私には非常にとっつきやすい本でした.

以下の記載は この本を読んで 私が理解できた範囲に要約しております.

ミトコンドリアは発電所

どの解説書を見ても,『ミトコンドリアは細胞活動に必要なエネルギーを供給する発電所である』と書いてあります. 上記の本を読んだ私の感想は,『ミトコンドリアは細胞の中の火力発電所』です.

JERA 千葉火力発電所
(C) JERA

火力発電所では,燃料(石炭,石油,最近では 天然ガス)を燃焼炉で燃やし,その高温の燃焼ガスでガスタービンを回し,これにつながった発電機が電力エネルギーを作り出します. つまり燃料の化学エネルギーを 電気エネルギーに変換しているわけです.

ミトコンドリアも,まったくこれに対応しています.対応はこの通りです.

イメグリミンはミトコンドリア機能を改善する』とありますが,このミトコンドリアのどこをどう『改善』してくれるのでしょうか? そして,そう主張する根拠は どんなデータを基にしているのでしょうか?

イメグリミンを開発した 仏Poxel社 Bozec博士の文献から,そこを調べてみましょう.

(C) Diabetes

[4]に続く

コメント