第66回日本糖尿病学会の感想[3] 糖尿病でいだく不安

【この記事は 第66回 日本糖尿病学会年次学術集会を聴講した しらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】

われわれ2型糖尿病を持つ者は,血糖値が上がることが何よりの不安です.『こんなに血糖値が上がったら合併症が起こりやすくなるのではないか』という不安ですね.

しかし同じ糖尿病でも 1型糖尿病の人の場合,たしかに高血糖も嫌なのですが,実は低血糖の方が不安が大きいのです.
急な低血糖は命にかかわることもありますし,『もしも運転中に低血糖になったら』と考えると,自分だけでなく他人の命も巻き込むかもしれません.

インスリンレコード

インスリンを注射し終わった直後に,『あれ? たった今 打ったインスリンは,単位を間違えたか?』
『はて? 食前のインスリンは打ったっけ? それともまだだったか?』

これは恐ろしいでしょう. 少なく打ち間違えた/多く打ち過ぎた どちらであっても不安になります.実際に 何単位打ったのかはインスリンペンの目盛だけが頼りです.またいつ打ったのかは自分の記憶だけが頼りです.朝/昼/夜でBolusインスリンの単位が違う人は,ついうっかりと前回の単位のままで打ってしまったかもしれません.

そんな不安を解消してくれるデバイスが紹介されておりました[ランチョンセミナー11].4月24日に発売されたばかりの製品です..

(C) サノフィ[PDF]

インスリンペンの注入ボタンにキャップのようにかぶせておくだけで,何月何日何時何分に何単位のインスリンを打ったのかを記録してくれます. 記録結果はスマホと連動しているので,間違いなく注射履歴を確認できます.

(C) サノフィ

さらにこのインスリン注射記録とリブレなどの血糖値記録とを対比させれば,より適切なインスリン単位の設定が可能になります.しかもこのデータは,ネット(クラウド)経由で主治医とも共有できるのです.不安を解消してくれるだけでなく,TIRを改善するにはインスリン単位の設定をどうすればいいかアドバイスまでしてくれます.


別の講演ですが,こんな話がありました.

『インスリンは太りやすい』と言われる.たしかに薬理作用からしてそうなのだが,それだけが原因ではない.
1型糖尿病の人は低血糖を感知した時,直ちに補食を摂る.しかも低血糖から脱したことを自分の眼で確認するまで食べる. 結果として食べ過ぎになることが多くなり,これも太る原因になっている.必ずしもインスリンだけのせいではない.

口演 2-99-4

低血糖に対する不安は,2型糖尿病の人には想像もできないものです.

[続く]

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