新型コロナの抗体[1] 保有量と持続期間

新型コロナ抗体保有率

日本で,新型コロナの抗体をどれくらいの人が保持しているのかという調査結果が発表されています.

新型コロナ 抗体保有の割合 5都府県すべてで1%下回る 2021年2月5日 NHK

厚労省が,昨年去年12月14~25日に調査した5都府県で,どこも1%未満であった,という報告です.

実は この調査は昨年6月にも行われています.

抗体保有調査の結果について 厚労省

ただし 前回調査は,対象検体の数や検出感度の点で,精度はかなり疑問でした.

コロナ抗体検査、厚労省の評価結果に疑問相次ぐ 2020_05_18_日経

ところで,この新型コロナの抗体の量と寿命はどれくらいなのでしょうか?

症状と抗体量との関係

抗体の量については,こういう報告があります.

PCR検査から新型コロナに感染していると判定された人,又は 症状などからその疑いがある人,合計151人の 血中 抗体保有量を調べたものです.

有症感染者()は,無症状感染者()に比べて,IgM抗体(左)及び IgG抗体(右)共に 高濃度の抗体を保有していました.

抗体の寿命は?

横浜市大の報告では,感染後6ヶ月を経て回復した人であっても,抗ウイルス抗体を保持していたとのことです.

新型コロナウイルス感染症回復者のほとんどが、6 か月後も抗ウイルス抗体および中和抗体を保有している

『抗ウイルス抗体』は,ウイルスが体内に入って来たときにウイルスに取りつきますが,だからといって そこでウイルスの人体細胞への感染力が必ず失われるとは限らないようです.
ウイルスの感染を妨害するのは,『中和抗体』であり,この中和抗体も,感染後6ヶ月を経た回復者から検出されたようです.

[続く]

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    PCR陽性者数=感染者数か否かについて先日より江部先生のブログで何回かやり取りしましたが、ぞるば様はどう考えられるでしょう。

    世間的には、PCR陽性者数≠感染者数が多勢で、それはそれで間違ってはいないのですが、私は以下のように考えました。

    社会的イベント(クリスマスや正月など)と発表される陽性者数には明らかなタイムラグがある。
    これをどう解釈するかと言う事になりますが、
    まず、ウイルスが付着してから陽性と判定されるまでのタイムラグを考える必要性を感じます。

    ①付着→感染→発症→受診→PCR陽性
    ②→濃厚接触者調査→受診→PCR陽性

    まず、発症した人が受診すると思います<①
    発症もしていないのに受診してPCR陽性として統計値に反映される確率は極めて低いと考えています。
    次にその人(陽性者)の濃厚接触者が追跡されて検査されるでしょう<②
    したがって、無症状の陽性者は②に含まれると考えられます。
    駅前コンビニ検査のような自由診療による陽性者は自治体や厚労省の統計値には反映されていないでしょう。

    そう考えると感染せずにPCR陽性とカウントされる人(②の一部または全部)と言うのは、社会的イベントでウィルスが付着してから10日以上経っているのが普通じゃないでしょうか。
    付着しただけで感染していない(自然免疫で排除され、増殖していない)ウィルスが10日以上も経ってから陽性判定されるでしょうか。私はこの点が非常に疑問です。

    勿論、市中感染が広がっていればランダムに定点観測していれば感染していないのに(付着直後で)PCR陽性となる人はそれなりにはいると思いますが、実際に報道されている陽性者数と言うのは①、②の手順でカウントされると考えるとやはり、PCR陽性者数≒感染者数と考えた方が良いと私は考えています。

    感染していないウィルスが排除されずに体内に留まる時間はどれくらいなのでしょうか。データが全く見つかりません。

    • しらねのぞるば より:

      まず 全般的な状況認識ですが,私は 新型コロナウイルスは すでに完全に常在化していると思っています.
      つまり,ここにもあそこにもどこにでも,既にコロナウイルスは存在しているということです.
      これは不思議なことではありません. 新型ではない,従来のコロナウイルスはどこにでもいるので,『いつの間にか風邪をひいた』となるのですから,新型コロナがすべての場所に蔓延していても不思議ではありません.

      『PCR検査陽性者』を『感染者』と呼ぶのはおかしいと思います. というか,『感染者』の定義が明確でないのに,たまたま 喉のスワブや唾液から新型コロナのRNAの断片が検出されたといっても,それはあくまでも『PCR検査の外部呼吸器粘膜 陽性者』であって,それ以上でも以下でもないと思っています.

      この記事でも触れましたように,昨年12月に東京都の抗体保有者は,0.91%でした. 昨年12月の東京都人口は 1396万人ですから,その時点で 東京都には 12万7千人の抗体保有者がいたことになります.
      一方 同時点で 東京都の累計の『PCR検査陽性者』は 54,902人(12/25時点)でしたから,PCR検査陽性者の2.3倍以上の抗体保有者が存在していたことになります.

      これを外挿すると,昨日時点で東京都の累計陽性者は10万4千人ですから,現在 東京都には 抗体保有者が24万人いると推測されます.

      しかも,新型コロナが体に『付着』すれば,かならず抗体ができるわけではありません.外部呼吸器から気管支を経て体内に侵入して 初めて免疫系が作動して抗体が作られるはずです.

      つまり抗体を有している人は,新型コロナに触れた/新型コロナを吸い込んだ人のごく一部に過ぎないはずです. 大半の人は新型コロナに触れたり吸い込んだりしても,自前の免疫で退治して一見落着でしょう.

      この記事にも書いたように,無症状の陽性者は,本当にコロナの症状が出た人に比べて 圧倒的に抗体の産生量が少ないです.
      ということは自前の免疫システムが出動するほどもなかった軽い感染では,もちろん症状は出ず,抗体すらも作られなかった,あるいは作られてもごく微量の抗体で感染が片付いてしまった,そういう人の方が圧倒的に多いのではないのでしょうか.

      つまり 私たちは もう毎日のように新型コロナに触れて,一部は吸い込んでいると思います. ただほとんどの人は何の症状も出ないというだけだと思っています.

  2. 西村 典彦 より:

    再度になりますが、私が疑問に思っているのは付着から時間をおかずに採取された検体のPCR検査結果ではなく「発表されている陽性者数」と「感染者数」の関係です。

    >『PCR検査陽性者』を『感染者』と呼ぶのはおかしい

    この点は私も同意です。異論はありません。
    例えばランダムに無症状者も含めて定点観測なりでPCR陽性になったのであれば「陽性=感染者」はおかしいと思います。
    蔓延している現状であれば、付着しただけで感染していない物でも「直ちに」検査すれば陽性となるでしょう。

    ※感染とは自然免疫で排除できずに、ウィルスが体内で増殖する状態であり、抗体ができる状態と私は考えています。

    しかし、私が疑問に思っているのは付着から時間をおかずに採取された検体の検査結果ではなく「発表されている陽性者数」と「感染者数」の関係です。
    PCR検査の原理の問題よりも現在の運用での陽性者数を重視して考えています。
    発表されている陽性者数は、
    ①クラスター発生→付着→感染→発症→受診・PCR検査(発症して初めて受診するはず)
    または
    ② ①の濃厚接触者→追跡調査→(発症に関わらず)受診・PCR検査(この被験者も①で付着したはずである)
    と言う手順を踏んでいるはずです。感染していないのに(付着しただけで)陽性となる人がいるとすれば②の場合です。
    ※非感染者がPCR検査をする可能性があるコンビニ検査的な自費検査での陽性者数は自治体、厚労省の統計値には反映されていないと思っています。

    したがって、①、②の手順を経て「発表されている陽性者数」は、「付着」から検査までにかなりのタイムラグがあります。
    このタイムラグが社会的イベントと「発表されている陽性者数」の増減のタイムラグとして表れていると思います。

    感染していれば、発症から数週間たってウィルスが分離できなくなっても(増殖しないので感染力を失っている状態でも)PCR陽性になると言うデータは存在するようですが、感染歴があるのですから、これを感染者数としてカウントする事は間違っていません。症状の有無とは別問題です。
    疑問なのは、付着しただけで感染していない場合にもそんなに長い間(②に該当)排除されずに陽性になるのかと言う点です。
    そこに言及した論文などは見たことがないので何とも言えません。

    「陽性信頼度は3%以下」と主張する論文が存在するようですが、もし、それくらいのタイムラグがあっても付着しただけのウイルス(の断片)が体内にあり、陽性になると言う事であれば、蔓延している現在、「陽性信頼度は3%以下」かもしれません。
    しかし、付着しただけで感染していない(=増殖しない)状態では、直ちに排除されるのであれば、「発表されている」PCR陽性者数は、誤差はあれど感染者数のトレンドを表していると言えるのではないでしょうか。
    少なくとも「陽性信頼度は3%以下」という事はないと思っています。「陽性信頼度は3%以下」で大半が、付着しただけのウィルスを検出しているなら、感染者数のトレンドにタイムラグは生じないはずです。いつ検体を採取しても一定数の陽性者がいるはずです。実際の感染者数とは無関係に、検査数に応じて陽性者数が増減するだけです。
    もしそうであれば、何の根拠もないPCR検査によって作り出されたデータによって世界中が振り回されている事になります。

    要するに、感染していない付着しただけのウィルスはどれくらいの期間、PCR陽性を示すのかによって、世の中で行われている(タイムラグを含めた①②の手順での)PCR検査の結果が実態を表しているのかどうかと言う事になると思います。

    どんな状態であれ、擬陽性(感染とは関係なくウィルスがないのに陽性となる)の確率が低ければと言う前提で考えて、PCR検査が確実に役立つ場面があるとすれば、ゼロコロナを目指す時だけです。
    世の中から新型コロナがなくなり、陽性者がゼロになるかどうかだけですが、これはあり得ないでしょう。
    Ct値と感染力の相関と言うようなデータが存在しない現在、感染力を持った感染者のみをあぶりだすと言う目的には全く使えないと思います。
    また、こんな大規模にPCR検査をした事がないので例えばインフルエンザで行えばどうなるかもわからず、比較も出来ません。

    • しらねのぞるば より:

      江部先生のブログは過去記事のコメントが検索しづらいので,ここまでの流れがよくつかめておりません.

      >「発表されている陽性者数」と「感染者数」の関係

      前者の「発表されている陽性者数」とは,メディアでは『感染者』と呼ばれている厚労省発表の数字のことですね?
      で,それとは別に「感染者数」とは,どの数字のことを指しているのでしょうか?

      • 西村 典彦 より:

        感染者数とは実際に感染しているであろう人の数と言うことです。特にどこかに発表されているものではありません。
        説明がわかりにくくお手数かけました。

        • しらねのぞるば より:

          >感染者数とは実際に感染しているであろう人の数

          キャリアのことですね? (感染性細菌の場合は『保菌者』と呼びますが,ウイルスの場合は『キャリア』です)
          キャリアであれば,2月9日の返信コメントにも書いたように,私は新型コロナは既に市中蔓延していると考えているので,当然 キャリアの実数は PCR検査陽性者よりははるかに多いと思っています.

          キャリアのすべてが症状が出るとは限らず,無症状の人もいるでしょう(私は圧倒的にこのケースだと思っています).しかし,無症状だから他人に感染させる能力を有しないとは限りません. 無症状のキャリアなのに,強力な感染能力を持つ人もいるでしょう(=いわゆる スーパースプレッダー,又は『チフスのメアリー』など)

          又 キャリアであった人が,自力又は偶然でコロナを排除してしまい,キャリアでなくなる場合もあるでしょう. 外呼吸器にウイルスが付着したものの,鼻汁・唾液と共に飲み込んでしまって,胃に送られてしまい,ことなきを得たケースです. これは 非常に多いと思っています.

          ところがキャリアでなくなったのに,人込みの中を歩いたために,またもやコロナをもらってしまうこともあるでしょう.
          つまりキャリアの人数は増減するのが自然だと思います.そして,人間同士の接触確率が上がれば増えて,(強力なロックダウンや外出自粛などで)頻度が下がれば減っていくでしょう.

          年末・年始で混雑が増えると,キャリアに遭遇する頻度確率が上がって,キャリアは増える,そして潜伏期間を経て症状が出た人はPCR検査にかかってくる.
          よって

          人の衝突頻度ピーク(クリスマス・年末年始)→ キャリア増加→潜伏期間後PCR陽性者増加ピーク→数週後に重症者増加ピーク→さらに数週後死者増加ピーク

          という順番だと解釈しています.