糖質93%の超高糖質食(コンソメスープとマッシュポテトだけ)を食べた場合,そしてそれらと同時に脂質を摂った場合,それぞれについて 胃からの排出時間や血糖値・インスリンはどうなるのか? 糖質と脂質との関係をストレートに調べた英国の実験です.
前回記事の通り,まずコンソメスープ300gを飲み,その20分後にマッシュポテト300gを食べて,食後の血糖値・インスリンを調べました. なお,マッシュポテトには無害な放射性Tcが添加してあり,ガンマカメラで胃からの排出時間を測れるようにしてあります.
実験1の結果
コンソメスープに60gのマーガリンを入れました.
結果はこの通り.なお,青はどちらにもマーガリンが入っていない対照群です.
上段のグラフは,ガンマカメラで追跡した マッシュポテトの動きです.マッシュポテトは放射線ラベルしてあります. 全量が胃に入った時を100として,それ以降 胃から出ていくにつれて 徐々に値が減少していきます.中段・下段は同時に測定した血糖値とインスリン量です.
実験2の結果
マッシュポテトの方に60gのマーガリンを入れてあります.
結果はこの通り.青はどちらにもマーガリンが入っていない対照群です.
まずは この2つの実験結果を見比べて じっくりと堪能してください.
ただ奇妙な図柄を長時間 眺めていると,怪しげな新興宗教にハマったのではないかと ご家族が心配するかもしれませんから,部屋のドアは閉めておいた方がいいと思います.
[4]に続く
コメント
面白いですね。あれこれ考えどころが満載です。「やっぱり」「あ、そうか」「ひょっとしたら」などなどいろいろ考えが浮かびます。
2型糖尿病患者で研究してくれたらもっとよかったのに、、、とも思いますが、2型糖尿病患者だと多分この実験では(血糖値やインスリンなど)一括りにはできないだろうなあなどとも思います。
次の記事たのしみにしています。
素直に基礎現象を解明しようというこのような論文は,本当に少なくなりました. こういうことは完全に解明されたからもはや研究に値しないというのなら別ですが,糖質に対して血糖値やインスリンがどう応答するのか,実はわかっていないことの方が多いと思います. その意味で,この論文は 鹿児島大学 納教授のHPのデータと並んで貴重なものだと思います.
興味深い結果ですね。
どちらも胃の中に入った量は同じなのに、マーガリンをマッシュポテトに混ぜるか、コンソメスープに入れるかで、血糖値、インスリン分泌のピークまでの時間がまるで違っています。
さて、これはどう考えたらよいのでしょうか。
インスリン分泌も遅れていますから、消化吸収が遅くなっていると考えられますが、マーガリン入りコンソメスープは液体なので、代謝が速く、含まれる脂質(マーガリン)による吸収抑制効果がより強く表れたと言う事なのでしょうか。
マッシュポテトにマーガリンを混ぜた方は、血糖値もインスリン分泌もピークが2つある二峰性のグラフになっていますが、これは私の「ざるうどん+穴子の天ぷらの実験」の結果とよく似ています。
しかし、マッシュポテト+マーガリンの方がピークが低くなっていますね。だとすれば、コンソメスープ+マーガリンの方が代謝が速いとは言えないことになりますが。。。
しかも、マッシュポテト+マーガリンの方が、インスリン分泌の曲面下面積が小さいように見えます。
少ないインスリンで、血糖値が抑えられると言う「なんじゃこりゃ」(松田優作風w)と言う結果が非常に面白いです。さて、どんな理由が?
> マーガリンをマッシュポテトに混ぜるか、コンソメスープに入れるかで、血糖値、インスリン分泌のピークまでの時間がまるで違っています
日本の栄養指導は,こういうことをわかったうえで行われているとは思えませんね. まあ「食事はゆっくりとよく噛んで」と言っておけば それ自体は間違いではないでしょうけど.
>少ないインスリンで、血糖値が抑えられる
でしょう? インスリンの分泌量だけで血糖値が決まるとおっしゃる先生には,ぜひこのデータを素人にもわかるように説明していただきたいものです.
興味深い記事ですね。炭水化物の後食べも、人によっては効果はイマイチで、私の家族もいろいろ食べてリブレで測定していました。
スープ➕マーガリンと同じく、油入りの汁物を先に食べると、血糖値の下がりが悪いようでした。血液循環が悪くなるのでしょうか…インスリンの効きも悪くなるのかと。
シチュー先食べだと、2時間経っても180超えの高値でした。
マッシュポテト➕マーガリンの、炭水化物に油を混ぜたものの効果もあるのかも。確か、白米➕オリーブオイルは良好でした。
この論文の被験者は,元気いっぱいの20代の若者で,正常な健康人です. したがって,我々糖尿人には 多分そのままは当てはまらないでしょうね.しかし,耐糖能が正常であれば,本来こうなのだというデータを示してくれるのはありがたいです.
P/F/Cが同じだからといって,食後血糖値が同じにはならない. それは多くの人が経験しているのに,食品交換表では 相変わらず P/F/C比だけを延々と説明しています.データ栄養学の佐々木敏 東大教授も,『日本の栄養学は世界の圏外』と断じています.