食事の脂質と食後血糖値[2]

食事に脂質が含まれている場合と,そうでない場合とで,血糖値やインスリン分泌は食後どう変わるのを調べた文献です.

食事中の脂質が胃排出と食後の血糖値・インスリン応答に及ぼす影響

実験方法

この試験に参加した被験者は,すべて年齢20~28歳の健康な男性でした. いかにも元気がありそうです. できれば 境界型糖尿病のオジサンを対象にしてくれればありがたかったのですが.

純粋に脂質の効果を調べることが目的なので,試験に用いた方法はこの食事です.

コンソメスープとマッシュポテトだけ,という簡素なものです.229kcalのほぼすべてが炭水化物という高糖質食です.この実験はすべて午前中に行ったので,日本で言えば「 ご飯と味噌汁だけの朝飯」に相当するでしょうか.
用いられたコンソメスープは 缶詰スープで,日本でもおなじみのキャンベルの製品です.

Campbell’s Classic Beef Consommé
(C) Cambell Food Service

マッシュポテトの品名は記載されていませんが,乾燥マッシュポテトを湯で練ったものです.

(C) cheetah さん

そして この食事のコンソメ又はマッシュポテトのどちらかに脂質を入れて,比較しています.脂質として用いたのはこのマーガリンです.ヒマワリ油から作られたマーガリンです.

(C) SUMA

どれも英国家庭の台所には必ずあるという身近なものです.なお,SUMAは自然食志向の食品メーカーなので,このマーガリンはトランス脂肪酸フリーであると うたっています.

実験は2回行われています.1回目の実験にはスープにマーガリン60gを入れたもの2回目の実験は マッシュポテトの方に60gのマーガリンを入れました
さらに対象比較用として,どちらにもマーガリンを入れていない組み合わせも行っています.

なお,いずれの場合も,マッシュポテトを練る水には 微量の99mTC(放射性テクネチウム)を添加して,放射線ラベル化してあります. マッシュポテトが胃を通過する時間を追跡するためです

() 放射性テクネチウムの半減期は6時間と短いので,仮に体内に残っても被爆量は問題ありません.

実験手順

実験は以下のスケジュールで行っています.

まず最初の5分でコンソメを飲み,その20分後にマッシュポテトを10分以内に食べます.コンソメとマッシュポテトの合計重量は600gですから,結構ボリュームがあります.なお,被験者からは『おいしい』と好評だったようです.

食後は15分ごとに採血して,血糖値とインスリン濃度を測定しています. また実験中 被験者はガンマカメラ(=シンチレーションカメラ)【注】の前にずっと座っていて,マッシュポテトの移動の様子が記録されます.

【注】シンチレーションカメラ=ガイガーカウンターがカメラになったようなものです.パーキンソン病の診断にMIBG心筋シンチグラフィーという画像診断を行う時にはよく使われます.この論文で使っていたカメラの Model 1201という機器は,現在では見当たらないものですが,多分こういう装置だったと思われます.

MIE-Gamma-Camera
PICOLA
(C) Medical Imaging Electronics

この論文では 実験プロトコル説明がそっけないものだったので,ここまで読み下すのに手間取りました.この実験の結果は次回に.

[3]に続く

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