ここまでの話をまとめますと,
- 従来 ケトン体は非常時の(=飢餓状態などの)間に合わせエネルギー源と考えられてきた.
- しかし最近は 生命の維持に関わる臓器(=心臓,腎臓)にとって重要なエネルギー源とわかってきた.
ここで エネルギー源とは,細胞の火力発電所であるミトコンドリアで燃やすための燃料に使われる,という意味です.
燃料だけか
しかし,今年1月の第24・25回 日本病態栄養学会 では,それにとどまらないのだと解説されました.
シンポジウム13 ケトン体の生理的意義を考える
S13-1 ケトン体受容体と栄養シグナル
京都大学 木村郁夫
S13-2 ケトン体の脂肪細胞機能への影響
大阪大学 西谷重紀
S13-3 ケトン体代謝と糖尿病性腎臓病
滋賀医大 久米真司
S13-4 新生児におけるケトン体合成の意義
熊本大学 有馬勇一朗
S13-5 小児GLUT1欠損症に対する中鎖脂肪酸を用いたケトン食療法
大阪大学 長井直子
特に 最初の講演では,ケトン体は 生理活性物質であり,人体内の信号伝達を担っているというものでした.その内容は,この文献をものすごく圧縮したものでしたが,
体内に存在する 長鎖,中/短鎖脂肪酸の受容体は,同時にケトン体の受容体でもあり,それらがアノマロカリスのようにケトン体を捕まえると,人体全体に信号を発信して 代謝調節を行っているというのです.
これは血糖値が上昇すると,体内のあちこちでそれを感知してインスリン分泌が始まったりグルカゴン分泌が低下するのとまったく同様の生体反応です.
すなわちケトン体は,ただ燃やすためだけの燃料ではなくて,生理活性物質なのです.
[12]に続く
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