メトホルミンとの「相性」[3]~腸で吸収されるまで

糖尿病の方なら,GLUT=グルコーストランスポーターは,よくご存じでしょう.血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれるためには,GLUTが細胞の表面で出迎えてくれない限り,細胞膜を通過できないのです.(GLUTにはインスリンの存在が必要なものと不要なものとがあります)

これと同様に,消化管の表面細胞には陽イオンになったメトホルミンを取り込むトランスポーターがあります.

腸の内面表皮細胞のトランスポーター

上図の通り 腸管の表面細胞にはいくつかのトランスポーターがあるのですが,メトホルミンは前回記事の通り,陽イオンの形で到達するので,OCT1というトランスポーターで取り込まれます(PMATや,SERTも関与しているとの説もあります)

OCT1の推定構造

メトホルミンは前回記事の通り,陽イオンの形で到達するので,メトホルミンを捕まえるのはOCT1だと言われています. OCTとは[Organic Cation Transporter],つまり「有機陽イオントランスポーター」 という名前です(★).

(★) よって すべての関西人はここで『そのまんまやんけ. ひねりなさいっ!』とツッこむ義務があります.

OCT1の推定構造はは上図の通りで,12層の蛋白質から,いかにも「捕まえてやるぞ」感が満載の3つの輪をもった頭をもたげています.

余談ですがこれを見ると私は いつもカンブリア紀の奇怪な古生物 アノマロカリスを思い出します.

アノマロカリス
生命大躍進展 より
国立科学博物館

メトホルミンの輸送にかかわる OCTにはもう一つ,腎臓に OCT2があります. こちらは血管を流れるメトホルミンを捕捉して,腎臓に取り込み 尿中に排泄する時に活躍します.

つまり,メトホルミンの吸収と排泄には2つのOCTがかかわっているのです.

[4]に続く

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