クリニックでは どんな栄養指導を?[2完]

『糖尿病』『栄養指導』をキーワードにしてネットでランダムに検索した 50のクリニックのホームページから,そのクリニックが 糖尿病患者にどういう栄養指導をしているのかを調べてみました.

ほとんどのクリニックでは,『栄養指導』の詳細についてはふれずに,ただ『患者一人一人ごとに,個別に相談したうえで,栄養指導を行います』でした.

そう聞くと当たり前のようですが,これは 私が10年以上前に あちこちの病院やクリニックで『糖尿病の食事療法』を尋ねて回った時からみれば,様変わりしています. あの時は,ホームページの紹介文だけでなく,実際にそのクリニックを訪問したり,電話で尋ねたのですが,すべてのクリニックで『正しい食事療法=食品交換表に基づくカロリー制限食を指導しますから,安心してください』でした.

それに比べると,下の図にまとめた通り,クリニックの栄養指導は多様化していました.

なお,この分類ですが,前回記事で 『単に個別相談』としか書いていないクリニックであっても,そのホームページに掲載の写真や文章【★】から『食品交換表主体』と判定したものも含んでいます.逆に『とんかつは高カロリーですが,ざるそばの方がはるかに血糖値が高くなります』などという文章があるクリニックでは,どうみても食品交換表派ではないと判断しました.

【★】『糖質は体に必要な栄養素です』などという文章. また 『食事療法の見本写真』から明らかに食品交換表準拠と判定できるものなど.

もちろん,まだまだ 食品交換表=カロリー制限食が 1/3 を占めています. しかし,私が30軒ほどのクニリックを聞いて回った10年前は,100%でした. その帰り路に書店に立ち寄って 食品交換表(当時は第6版でした)を買い求めたのでよく覚えています.

またホームページには栄養指導の内容を具体的に書かず『個別に相談して栄養指導する』という,半数を占めるクリニックは,本当に個別に食事療法を決めるのかもしれませんし,患者の話だけは聞き置いて,結局食品交換表に誘導するのかもしれません. しかし,最初から キッパリと『当院では 食品交換表で指導します』と明言しなくなった,ということは事実でしょう.

更に,明らかに 『食品交換表に従わない』ことを 前面に打ち出しているクリニックも合計 14%ほどですが,現れてきました. これは そう宣伝することにより患者がたくさん来てくれるという自信でしょう.

これらと別に たった一つ(前回記事 No.46)ですが,『4種の方法=[カロリー制限食/当院 独自の糖質漸減法/緩やかな糖質制限食/カーボカウント]から,患者に選択してもらう』というクリニックがありました. 『緩やかな糖質制限食』については『推奨しないが,患者が希望するなら指導する』という,院長の苦虫をかみつぶしたような顔が浮かびそうなスタンスです. この例は,もはや 糖質制限食を許容しないと病院に来てくれない患者が出てきたことの表れでしょう.

『患者は 医師の言うことに盲目的に従っていればいいのだ』が通用しなくなってきたのです.だからこそ,日本糖尿病学会は『糖尿病診療ガイドライン 2019』 で,「食事療法は 患者ごとに個別化されるべきだ」という原則を出さざるを得なくなったのです.

なお,たかだか50軒ほどのクリニックを調べただけなのに,『リブレ(CGM)を活用している』が4軒ありました.リブレを使えば,食後血糖値の爆上げは何によって起こるのか 誰の目にも明らかになります.
また病院紹介に『糖質』という単語が登場したクリニックは6軒でした.糖尿病患者が『糖質』という言葉に敏感になってきたことをうかがわせます.

【完】

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