第63回日本糖尿病学会の感想[4] 古くて新しいメトホルミン

感想[3]は ブログ別館に掲載しました.

今回の学会で もっとも楽しみにしていた,メトホルミンに関する総合シンポジウムを聴きました.

このシンポジウムは,メトホルミンの糖尿病薬として よく知られている効能,すなわち 血糖値低下・インスリン抵抗性改善作用ではなくて,それ以外/それ以上の効果に焦点をあてたものです.

大別して;

  • メトホルミンによる腸内細菌の変化(講演 1)
  • メトホルミンの発癌防止効果・癌抑制機構(講演 2,3,4)
  • メトホルミンによる他の糖尿病薬の薬効増強効果(講演 5)
  • メトホルミンによる腸での作用(講演 6)

です.

講演1:メトホルミンと腸内細菌

多数の文献が紹介されましたが,その一つに

Nature

メトホルミン投与を受けて耐糖能が改善したマウスから,別のマウスに『糞便移植』すると,メトホルミンで『鍛えられた』腸内細菌叢を引き継げるという実験は面白いものでした.

講演2,3,4:メトホルミンと癌

この講演では メトホルミンは インスリン抵抗性改善以外にも体重減少,心血管死亡率低下,総死亡率低下効果が確認されており,特に最後の総死亡率低下には 高齢者の癌による死亡を減らしたことが寄与していると考えられていることが解説されました.

メトホルミンがなぜ癌による死亡率を低減するのかは,最近精力的に研究されていて,下記はその一例です.メトホルミンの効果を解明すれば,それは癌の発生を予防できるてがかりを得られるからでしょう.

講演 5:メトホルミンと他の糖尿病薬

DPP4阻害薬は,現在では日本の糖尿病患者の7割ほどにも投与されるようになりました.また SGLT2阻害薬も,特に肥満・インスリン抵抗性が主体の糖尿病の人には 著効がみられることが多いので,よく処方されるようになってきました.
これらの薬にメトホルミンを追加投与すると 既に投与されていた薬の効果に加えて効果が増強される例が紹介されました.

講演 6:メトホルミンの腸での作用

本館ブログの シリーズ『腸にはメトホルミン』で取り上げた内容も含めて,肝臓ではなく 腸で働くメトホルミンの機構が非常に詳しく解説されました.


学会の感想記事は,本館・別館に交互に記載しています.

次回 感想[5]は 別館ブログにあげる予定です

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