インスリン分泌の『なぜ?』を考える4

膵臓β細胞が理想的に機能していれば,常に血糖値に応じた量のインスリンが分泌されるはずであり,その場合 血糖値とインスリン分泌量は直線関係になるはずです.
実際 納先生のホームページに収載されている健康人の5時間糖負荷試験のデータで,No.14の30代の男性は たしかにほぼ直線関係になっていることが確かめられました.

分泌『遅延』とされているケース

そこで,糖負荷試験で 『インスリンの分泌が遅れるために』最初は高血糖,後に低血糖におそわれる人の場合をみてみます. 同じく 納先生のホームページの,No.13の40代の男性の方です.

血糖値のピークは試験開始後30分の177mg/dlです. しかし,インスリン分泌のピークが90分であり,そのため180分で血糖値が62にまで下がっています(この時 低血糖症状が出ています).
しかし,空腹時の血糖値が95で,120分でも115なので,この方は 現在の糖尿病診断基準では『正常』とされます

前回記事と同様に,横軸に血糖値,縦軸にインスリン量をとってプロットするとこうなります.

No.14の人とはまったく形が異なり,完全なループを描いています.

周期が同じで ただ位相だけがずれている 2つの波形をX軸とY軸にプロットすると,リサージュ(Lissajous)図という波形が描かれますが,このループは正に定義通りの形です.

そして,この図の赤点線で示したように,血糖値が140の時,この人のインスリン分泌量は45の場合と,16の場合の2つがあることがわかります. つまり 同じ血糖値なのに,インスリン分泌量がまったく異なる2つの状態があることになります.これは 磁性体のヒステリシスに似た現象が存在することをうかがわせます.

磁性体のヒステリシス ループ

二人を比較すると

前回の No.14の30代男性と,今回の40代男性の糖負荷試験/ループ図を並べて比較すると,こうなります.

空腹時と120分での血糖値しか見ない 現在の糖尿病診断基準では どちらも『正常』と判定されます.

こう並べてみると,この二人の膵臓の動作は 別物ではないでしょうか.しかし,現在の医療では,この二人は どちらも『正常人』であり,区別されていないのです.

[5]に続く

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