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ケトン体は『飢餓時だけに生成される非常エネルギー』なのか[4]

前回は,ケトン体は,脂肪酸を切り分けた アセチルCoAを原料として作られるという話でした. ただし,その製造場所は肝臓の細胞の中のミトコンドリアの中(より正確には ミトコンドリアの内膜の中のマトリクス)です.そして消費される場所は,各臓器の...
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ケトン体は『飢餓時だけに生成される非常エネルギー』なのか[3]

ケトン体に関する プチャルスカ博士のレビューを読み進めています.このレビューでは,ケトン体についての最新の知見が網羅されています.ケトン体はどこでどうやって作られるのかケトン体が製造される場所は ほぼ肝臓のみです.ケトン体は脂質を分解した脂...
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ケトン体は『飢餓時だけに生成される非常エネルギー』なのか[2]

代謝が破綻しているという極端な状態で発生するケトアシドーシスの例を挙げて『ケトン体は危険だ』というのは,交通事故でグチャグチャになった車の写真を見せて『車は危険だ』というのと同じだと言うのが前回の記事でした.ケトン体の断片的な情報だけではな...
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ケトン体は『飢餓時だけに生成される非常エネルギー』なのか[1]

危険なケトン体?ケトン体について日本の医学情報を検索すると,ケトン体(主にβヒドロキシ酪酸とアセト酢酸)は、飢餓時のようなグルコースが枯渇した状態において肝臓で産生され、速やかに脳や他の組織でグルコースの代わりに利用される日本医療研究開発機...
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朝の悪心(気分の悪さ)の謎はこれだったのか?

この記事をまとめるために,糖尿病を自覚して間もない頃の非常に古いデータまで発掘していたら;当時の記録の中に 時々 不思議な言葉がありました.10:30 悪心朝食後 悪心などという文字です. すっかり忘れていましたが,そういえば まだ 血糖値...
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[2型糖尿病]は存在しない:日本では

2型糖尿病とは1型糖尿病は,GAD抗体の有無により,ほぼ明確に診断が定まります(ただし 緩徐進行型1型糖尿病 SPIDDや 劇症1型,特発性1型ではGAD抗体陰性もありえる).一方 2型糖尿病の診断基準は,あいまいです.一応 『空腹時血糖値...
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[2型糖尿病]は存在しない:世界はさらに先へ…

欧州(EU)には,大学研究機関と製薬会社とが共同で運営する官民共同機関 IMI(Innovative Medicines Initiative)という組織があります. 『革新的医療推進機構』とでも訳すのでしょうか.この組織は 2008年に発...
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[2型糖尿病]は存在しない:Ahlqvist最新情報

という単一の病気は存在せず,病理・病態の異なる複数の病気を雑駁にまとめてそう呼んでいるだけである.The Lancet Vol.6(5) p361-369, 2018という スウェーデンの E. Ahlqvist博士の新説は 欧米ではかなり...
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加齢と糖尿病[7完] 加齢にはメトホルミン

糖尿病の人では,すべての人がテロメア長が短くなるのではなくて,Ahlqvist分類の4種の内,MARD(Moderate Age-Related Diabetes:軽度加齢性糖尿病★)だけでした. 他の3種( SIDD,SIRD,MOD)の...
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加齢と糖尿病[6] ドンブリ勘定をやめてみたら

ここまでのところで加齢はテロメア長を短くし,循環器系疾患では更にその短縮を加速する.ここまでは明確でした.しかし糖尿病とテロメア長との関係は はっきりしないいかにもこれは不自然です.このモヤモヤを解いてくれる報告がありました.4つの2型糖尿...
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加齢と糖尿病[5] 糖尿病とテロメア長

テロメアとは,遺伝情報を記憶している染色体の末端を延長するように付属していて,『保護テープ』の役割を担っています.1つの細胞が2つに分裂するたびに 染色体も同じものが二組必要となりますから,染色体の複製(コピー)が行われます. ただし,もし...
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加齢と糖尿病[4] 加齢・疾病とテロメア長

テロメアは,人体の細胞が増殖のために分裂する際に,染色体のDNA情報が失われないように保護する役割を果たしていること,そしてその犠牲となって,細胞分裂をくり返すたびに,テロメアの長さは『すり切れるように』短くなっていく..これが前回までの記...
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加齢と糖尿病[3] 擦り切れていくテロメア

加齢に伴い,もちろん 体内の各臓器の機能は低下していきます.その原因の一つに細胞の自己増殖能力が次第に減弱していく『テロメア長の短縮』があることが,前回記事の内容でした. そしてそれが高齢者の糖尿病発症の原因の一つのようです.テロメアの役割...
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加齢と糖尿病[2] ローマの銭湯?

日本糖尿病学会が医師向けに発行している 診療・治療ガイドラインでは,高齢糖尿病患者の特徴は詳しく書かれていても,なぜ加齢で糖尿病が発症しやすくなるのか,その原因については書かれていませんでした.ところが,この資料を見ると;糖尿病専門医 研修...
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加齢と糖尿病[1] たしかに特徴はそうだけど

第64回 日本糖尿病学会は 6/7~21に 主な講演・口演がオンデマンドで配信再開されますが,その感想は 興味あるものを一通り視聴し終えてからにいたします.で,その間を利用して『加齢と糖尿病』の問題をひとくさり考えてみたいと思います.(C)...
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【続】肝機能指標と糖尿病【13完】ASTは本当に無関係か

最後にここまでの研究で 糖尿病発症リスクとの有意な相関性がみられなかったASTについて考えてみます.たしかに ASTは,心臓・骨格筋・赤血球など,つまり新陳代謝の盛んな細胞に多く見られるので,肝臓機能指標としては特異的ではありません.一般に...
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【続】肝機能指標と糖尿病[12] 結局 警戒ラインはどこに

(C) 胡麻油 さんここまでの文献探索で,久山町研究でも,南原市研究でも,中国人のデータからでも,ALTが正常範囲内であっても,高くなるほど糖尿病発症リスクは高まるGGTは,カットオフ値(境界値)がはっきりしないが,やはり高くなるほど発症リ...
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【続】肝機能指標と糖尿病[11] 中国人の場合

久山町研究の結果を受けて,各国でも 肝機能指標と糖尿病発症率との関係を調べる研究が多数おこなわれました. 前回までの韓国/南原研究もその一つでした.更に欧米の同様の文献も多数ありますが,ここでは 同じアジアの中国人のデータを紹介します.ただ...
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【続】肝機能指標と糖尿病[10] 女性の場合は

韓国の 南原市研究から,肝機能指標(ALT,AST,GGT)の高低と,約4年間の追跡期間中糖尿病発症率との関連を調べた結果です.ここまでの記事(,,)で,男性の場合では,ALTの高値のみが糖尿病発症に関連していることがわかりました.しかし,...
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【続】肝機能指標と糖尿病[9] ALTとASTでは

韓国 南原市の健康診断データ追跡から,『GGTが高いほど糖尿病発症率が高い』のは,GGTが独立に発症因子となっているのではなくて,他の因子の結果としてGGTが高くなっているだけ ということがロジスティック回帰分析 (logistic reg...