第26回 日本病態栄養学会の感想[8完] 総括です

【この記事は 第26回 日本病態栄養学会 年次学術集会に参加したしらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】

毎回そうなのですが,日本糖尿病学会でも この日本病態栄養学会でも,参加するたびに 福沢諭吉先生が1~2枚 飛んでいくとはいうものの,それに見合う いや それ以上の価値ある情報を得ています.

(C) K-factory さん

純粋に糖尿病に関する最新の専門知識を効率よく収集できることが一点,そして それ以上に大きいのは(継続的に学会に参加していれば) 日本の糖尿病治療の流れと方向性がある程度つかめることです.

私が初めてこれらの学会に野次馬参加した頃と現在とでは,『正しい糖尿病治療』がまるで変っています.特に食事療法が著しいです.

10年前までは,『糖尿病とは過食・運動不足などという悪しき生活習慣から生じたものだから』,徹底した低カロリー食を厳しく守らせるしかない,という考えしかありませんでした. 当時の食事療法とは,ある意味で『怠惰な糖尿病患者の根性を叩き直すための懲罰』という側面が感じられました. そして 男性であれば,体重が 120kgでも 70kgでも無関係に カロリーは一律に1,600kcalでした. これがいかに無茶なことだったかは現在では 学会も反省しています.

さらに『食の欧米化』は悪であり,糖尿病患者は無条件に肉食を控えるべきとしていましたが,現在では 高齢者には若者以上に蛋白質を摂ることを推奨しています.

こうして書き出してみると,この間の変化は 大きいものです. ほとんど正反対とも言えます. しかも この変化は じわじわと起こったのではなく,ある時点で 突然雪崩のようにガラガラッと変わってきたのです.その過程では それまでの『正論』『定説』を振りかざす人,それに『異議』を唱える人との間で 激しい論争が行われました.

メディアは学会のことは報道しても,そこで行われている論争だけは報道しないので,患者には このように学会が揺れていることは 見えていませんでした,しかし 別に学会がこのような論争を隠蔽していたわけではありません. その点ではフェアであったと思います.

(C) satosweeさん

ほぼ2年間にわたり 本ブログに書き留めた『食事療法の迷走』シリーズ ( 158完,及び その続編 )では,その 論争の推移をできるだけもれなく記録しました.

このシリーズの最終稿を めでたしめでたしで締めくくれる日が,そろそろ垣間見られるようになってきました.これが 今回 学会での ぞるばにとっての成果ですね.

地上の風と上空の雲

私は山登りが趣味ですが,本格的な登山家は 天気図や雲の動きには敏感です.特に前線が近づいている時には,地面付近では強い南風が吹いていても,はるか上空を見ると雲の動きが地表とは正反対の北風なのでわかります.

(C) nanairo125 さん

学会幹部の方も 上空からでは 我々 地表の患者の姿は目に入らないかもしれませんが,ぜひ一度は このような患者ブログも ご覧いただきたいものです.

都はるみ : アラ 見てたのね

(C) コロムビア

日本病態栄養学会の感想【完】

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