まだまだ迷走?日本糖尿病学会の食事療法[1]

昨年 『食事療法の迷走』というシリーズ記事を書きました.

第1話から第58話まで,我ながら呆れるほど長い長い長い長い長い長い長い…. (誰か,止めんかいっ!)シリーズ記事でした.

しかし,連載があんなに長くなってしまったのは,つまりは 日本の糖尿病食事療法が それだけ長期間にわたって右往左往したからです.それを忠実にトレースしたら ああなってしまいました. 私のせいではありません.

一段落したはずだったが

さすがにあれだけの長い顛末も,2019年10月に 日本糖尿病学会が『糖尿病診療ガイドライン 2019』(以下 GL-2019)を発表し,

その『第3章 食事療法』で;

糖尿病の食事療法は,そのなかでいわば最大公約数的な制約を受けることになる. さらに,合併する臓器障害,年齢によって食事療法の意義は異なり,このような患者が持つ多彩な条件に基づいて,個別化を図る必要がある.

『糖尿病診療ガイドライン 2019』p.38

と,高らかに『個別化された食事療法』を宣言したのですから,いくら何でも これで一段落したと思っておりました.
つまり,もう【続編】を書くことはないだろうと.

ところが

ところが 本年3月5~15日に開催された 『第55回 糖尿病学の進歩』の講演を聴いていたところ どうも様子がおかしいのです.

複数の講演終了後のオンライン質疑応答では,このようなやりとりがありました.

Q:病院に患者が来ると,血糖管理改善のために,すぐ薬剤を出す,これは間違っているのではないか.まず初診で患者の食事・運動を指導すべき. 今後 個別化食事療法指導の具体的な指針は出るのか? 食事療法はGL-2019によりダイナミックに生まれ変わっていくのか.
A:食事療法については学会内で 随分議論した.GL-2019に書かれていること以上に膨大な量の議論を行っている.
Q:それにしては GL-2019の記載では,食事療法・運動療法の位置づけが明確でない.薬剤による代謝管理はたしかに重要だが,そればかりが強調されすぎているのでは? 食事・運動療法の位置づけが不明確ではないか.
A:多くの人は そういう印象を持たれたと思う.ただGL-2019は,ガイドラインという性格上,エビデンスのないことは書けない. また高齢者などは病態が多様で一般化できない.よって『個別化が必要』とまでしか書けなかった. ただし,その後学会が出した『コンセンサスステートメント』では食事については詳しく補足している.

GL-2019で打ち出された『食事療法の個別化』は,たしかに結構な方針です.しかしGL-2019にはそれ以上の記載がなくて,抽象的で内容に乏しい,と感じたのは私だけではなかったようです.

それでは,このやりとりで紹介されている,その後学会が出した

『コンセンサスステートメント』

とはどういうものなのでしょうか?

[2]に続く

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