[血糖値]全数検査と抜き取り検査

全数検査

海外の製造拠点に出張した時の話です. 工場は 某アジアの巨大工業団地の中にありました.

朝 工場の屋上から外を眺めていると実に壮観なものが見られました. はるか地平線から 無数の人の群れが続々と工業団地めざして徒歩や自転車で出社してくるのです.

『人海戦術』と言う言葉が比喩ではないと実感できました.

この工場を立ち上げた時,なによりも苦労したのが 不良品発生が多いことでした. 日本から持ち込んだ機械と材料を使い,マニュアルも日本と同じ,基本的には日本国内と同じものができるはずなのですが,日本では見かけたことのない不良発生パターンで,毎日 多量の不良品の山が積み上げられていきます.

(C) スタジオ209 さん

もちろん不良品は出荷できないので,検査によって除去していきます.幸い当時は人件費はまだ安かったので その工場では まさに人海戦術で全数検査をしていました.
もちろん,テレビや自動車のように大きな製品であれば,全数を 製造ラインの最後で 入念に検査するのは当然なのですが,この場合の製品は,一つ一つが ピンセットでようやくつまめる程度の小ささです.

毎日100万個製造されるのであれば,100万個全部を検査するということです. 気が遠くなるような作業です.

ところで この悩みはどこも同じのようで,この工業団地に出資している日本の会社の親睦会では,いつもこの話題でもちきりでした.

中には なんと『二重全数検査』までしているところもありました. つまり全数検査を行っても,検査の見落としがあるので,1回目の全数検査で合格したものに対して更に2回目の全数検査を行うという方法です.さすがにここまでやれば,不良品出荷率はほぼゼロになります.しかし,せっかく人件費が低くて,製造コストを安くできる国に工場を作ったのに,検査コストがあまりにも高くつくと 結局トータル製造コストは日本国内と変わらないということになってしまいます.

抜き取り検査

上記の全数検査に対して,抜き取り検査(Sampling Inspection)という方法があります.
これは製造ラインから出てきた製品から,たとえば1万個あたり1個の割合で製品を抜き出して,検査するという方法です.そして この抜き取り検査で合格すれば,その1万個のロット全体を合格とするものです.

100万個/日の生産で,全数検査なら100万回の検査と人手が必要ですが,1/1万個の 抜き取り検査なら100回の検査で済みます.日本国内ではこれで十分でした.

出荷された製品の内,99.99%は検査していないわけですから,その中に不良品があったらどうするんだということになりますが,これが通用するのが『品質管理』です.

ある製品の不良/良品の基準[横軸]に対して,実際の抜き取り検査の結果分布がこうだったとして,

何回 抜き取り検査をしても 検査結果の分布が このように十分合格基準の範囲内にあるのであれば,この製品全体[母集団]は抜き取り検査で十分だとなります.


しかし,このように大きなバラツキや偏差(=平均値のブレ)があるのなら,全体のバラツキはもっと大きいと推定されます. この場合 抜き取り検査は危険であり,全数検査せざるをえなくなります.

血糖コントロール

そこで,ここから糖尿病の話です.

現在私は自分の血糖値データを抜き取り検査で行っています.具体的にはStaggered測定という方法です.

自分が糖尿病と気づいてから,最初の1~2年は,毎日 10回のSMBG 血糖値測定を行っていました

しかし,糖質制限を始めて.ほぼ自分にとって安全な糖質摂取量を把握できてからは,血糖値プロファイル(=血糖値グラフのパターン)も安定してきたので.それ以降は下のような Staggered測定にしています. これで全般的な傾向はほぼ把握できているだろうという考えです.

その根拠は 各測定点のバラツキ(標準偏差)です. この抜き取り(Staggered)測定であっても,そのバラツキは SMBG自身の測定誤差範囲に収まっているので,

これで正しく全体のプロファイルを把握できているのです.


なお,このスタガー測定法は,私の発明ではありません.

国際糖尿病連合(IDF = International Diabetes Federation)の測定ガイドライン(p.30)に記載されていたものを参考にしています.

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