糖質制限で血糖値プロファイルは変化するか

今回はこれがテーマです. ただ その前にご報告;

コメント一覧表示を増やしました

本ブログ開設の「ごあいさつ」にも書きましたように,このブログは私の集めた情報や経験をもとに皆様に考えていただき,遠慮なくご批判やご意見をいただくことを目的にしています. この場で何か講釈を垂れようなどとは,つゆほども思っておりません.むしろ皆様からのコメントの方が重要なのです. そこで,いただいたコメントを多少とも見やすくするために,最新のコメント表示件数を増やしました.

糖質制限食実行前後で血糖値プロファイルは変化するのか

【糖質制限食を実行したら,おそろしいほど高かった食後血糖値がすぐに下がった】これは実際にやった人の実感でしょう.では 血糖値の1日の変動パターンは変わるのか?結論から申しますと,「変化した」というのが私の体験結果です.もちろん これは個人の1症例であり,だからといってすべての人でそうなるかどうかはわかりません.

”糖尿病? これは大変だ” から始まった

以前から職場の定期健康診断でじわじわと血糖値やHbA1cが上がっていることを気にかけてはいたものの,仕事の忙しさにかまけていたら,ついに産業医から,『このままだと糖尿病だぞ』と警告されました. 今回の記事は,それ以降現在までの経過をまとめたものです.ただし今までにも文章ではあちこちのブログで報告してきましたし,本ブログの「これまでの経緯」にも書いていますので,今回は 数値指標の経緯が主体です.

カロリー制限食をやってみたら

産業医から脅された時は,職場の定期健診で 空腹時血糖値124でした(その後の再検査で108だったので,とりあえず 糖尿病宣告は執行猶予で放免),そこで大学同期の糖尿病専門医の助言を得て,日本糖尿病学会発行の『糖尿病治療ガイド』(当時はそういう冊子名でした)や日本糖尿病協会(日糖協)発行の月刊誌『さかえ』,あるいは 女子栄養大学発行の月刊誌『栄養と料理』などを読み漁りました.当時の印象は,糖尿病の食事療法・運動療法については,どの資料を見ても同じことが書いてあり,「なるほど,医学界では糖尿病の治療法は確立しているのだな」でした.よってここに書かれていることさえ守れば,来年の定期健診は楽勝だねと,ウキウキして自己血糖値測定器(SMBG)も購入し,『治療』を開始しました.その結果がこれです.

良くなるどころか,むしろ悪化しました.学会推奨の炭水化物60%;1600kcalのカロリー制限食,女子栄養大学の雑誌のきれいな写真にあるような「バランスのいい料理」,通勤往復では山手線の2駅分を必ず歩く,つまり 治療ガイドに書かれていることを忠実に実行したらこうなったのです. それまでに買い集めた資料はすべて紙ゴミとして処分しました.

なお,これ以降のすべてのグラフで,表示されている血糖値の数値は,最低でも10数点,多い場合は100点以上のSMBG測定結果を平均したものです.SMBGのように±15%の測定誤差のある機器では,単発あるいは少数のデータだけでは信頼性に乏しく,偶然の誤謬[★]をやってしまうおそれがあるからです.

[★]偶然の誤謬
サイコロを2回振ったら,2回とも[六]が出た.これを見て,『このサイコロはイカサマだ!』と思ってしまうこと.100回,1000回とサイコロを振ってみれば,最初の2回は偶然だったとわかります.

糖質制限食に切替

すっかり日本の情報が信用できなくなったので,以降は主に欧米文献を読んでいましたが,偶然 ネットで江部先生のブログを知り,即座に切り替えました. 糖質制限開始からほぼ1年分のデータの平均値がこれです.

カロリー制限食と比較するとこうなります.

食後の高血糖ピークが消失したのは当然として,昼食前の血糖値はかえって上がっていることに気づきました. 実はカロリー制限食をしている時には,ただでさえひもじい思いをしているのに,特にお昼前になると猛烈な空腹感に襲われていました. しかし,糖質制限食ではその空腹感もなくなった(どうかすると昼飯時刻になったことすら気づかない)のは,このグラフからも裏付けられました. カロリー制限食の時には,血糖値が200以上になったかと思えば,70を下回る時もあり,「本当に糖尿病なのだろうか? 何かほかの病気ではないか?」とも疑ったものです.

そして糖質制限食も8年目に入った現在(青線)との比較です.

注目していただきたいのは,各食事前の空腹時血糖値です. 糖質制限食1年ではいったん上昇したのですが,ここにきて再び下がり始めました.

朝の血糖値が ようやく下がった

しかもなかなか下がらなった,起床時の血糖値も下がってきました. 起床時空腹血糖値の年ごとの推移をグラフにするとこうなります.

グラフの各ポイントから上下に伸びているヒゲは,データのバラツキ具合を表すす標準偏差です. ご覧のように朝の空腹時血糖値は,平均値が年を追って低下するだけでなく,そのバラツキも小さくなってきています. つまり とんでもなく高い値が出ることはほとんどなくなったと言うことを意味します. 実際最近の朝の血糖値はほぼ毎回2桁です.初期の最悪期からみれば半分になっています.

糖質制限で血糖値プロファイル全体が変化した

以上みてきた通り,糖質制限食により私の場合は 食後高血糖の消失という,ある意味当然の効果だけでなく,空腹時の血糖値までも低下してきました. つまり自前の基礎インスリン分泌だけで血糖値を安定させることができるようになったわけです.皆様も血糖値測定の結果は保存しておいて,時々 整理・分析してみることをお勧めします. 多数のデータであればあるほど,わずかな傾向の変化でも検出できるからです.

皆様のご意見をお待ちします.

コメント

  1. ホリデー より:

    長期のデータ、参考になります。自分も改善の可能性があるのかもしれないと期待したもします。(それも人それぞれなのかもしれませんが)

    個人の血糖値の長期間のデータはあまり見かけないので、それだけでも貴重です。

    糖質制限最初の1年で食前血糖値がカロリー制限で上がっているのも面白いですね。

    記録を取り続けることの励みにもなりました。ありがとうございます。

    これからも期待しています。

    • しらねのぞるば より:

      SMBGの測定結果は,主治医に見せても普通はチラリと眺めるだけですからね.
      しかし,ともかくデータは捨てずに蓄積しておいて,「季節変動はあるのだろうか」「平日と休日で有意差はあるのか」などと何か思いついた時に「こういう観点から分析してはどうだろう?」とやってみるのがいいと思います.私のデータ総数は 2,000点を越えましたが,母数がこれくらいあると統計解析に耐えられるようになってきています.