appleさんから,HbA1cの値の変動が気になるというコメントをいただきました.そこで,病院で渡されたHbA1cの結果(だけでなく一般に健康にかかわる検査値すべてがそうですが)は,どれくらい信用すればいいのか,この問題をとりあげます.
HbA1c測定法の原理
まず一般論なのですが,HbA1cの測定法には3種類あります(下記参照).
HPLC(液体クロマトグラフィー)法,免疫法,酵素法です.測定精度は HPLC法がもっとも精密とされており,基準法となっています.しかし,後の2法の方がランニングコストが安いので,病院が外注に出す検査センターや,いわゆる検査カフェではこれらがよく採用されているようです.
HbA1c測定に誤差はあるのか
自分で血糖値測定を行っている人であれば,家庭用のSMBGは公称±15%程度と結構な測定誤差があることは よくご存じのはずです.また測定環境でも大きく数値は変わります.すぱ郎さんのブログでもどれほど影響が大きいかが,わかりやすく紹介されています.
もちろん医療測定機器では,これほど大きな誤差は許されません.15%も誤差があったら,正常な人が糖尿病と診断されたり,あるいはその逆が起こってしまうからです.
ではありますが,あらゆる検査法には必ず測定誤差があります.誤差ゼロというわけにはいきません.医療用HbA1C測定器なので 誤差・再現性バラツキは非常に小さいのですが,それでも メーカー技術者が慎重にメンテナンスを行い,完全に較正した状態であっても,測定機器によっては5.6%の標準試料に対して, 5.3-5.7という数値を出すようです. つまり,最良の状態であっても,これ以上の精度は望めないことになります.
[参考]HbA1c値の測定方法間差の現状 – J-Stage
したがって,HbA1cで 0.2~0.3くらいの変化であれば,あまり気にしない方が精神衛生上よさそうです.それよりも数か月に1度くらいの測定を行ってそれをグラフにして,その測定値の間に統計的有意差があるのかどうかを調べればいいと思います.『有意差検定』というと,ややこしい計算をするのかと思われるかもしれませんが,ご安心ください,ここは暴論ブログなので 『しらねのぞるば流 簡易検定』です.
まず検査結果をグラフにします.

さらに,グラフの各点を,測定誤差分の2倍の直径の円で塗りつぶしてしまいます. ここでは 病院のHbA1c検査でも0.3くらいの誤差はありそうですから,直径 0.6の円です.

いかがでしょうか? 真の値は『この円の中のどこかにあるのです』
決して円の中心ではなく【円の中のどこか】です.円の真ん中かもしれませんし,円の端かもしれません.
そういう目で眺めると,本当にHbA1cが大きく変動したのかどうかは怪しくなってきますね? このケースでは『変動に有意差なし』です.有意差検定というのは,ただこの操作を計算で確かめているにすぎません. もっともこのケースでは,データの数が少ないので,まじめに計算しても有意差はありません.
ですから,検査値の数字の細かいところまで気にする(*)のではなく,おおよその長期傾向だけで判断することをお勧めします.
(*) 私も何年か前に HbA1cが,5.6 → 5.4 → 5.2 と3年連続で下がったので,『やった! これで来年は 5.0. 再来年は4.8だ!』と喜んだら,翌年は5.3でした.
コメント
appleです
お忙しいところ早速記事にして下さりありがとうございます。
なるほど、有意差検定という考え方ですね。
小さなことに一喜一憂せず大局を見るようにしなければと思いました。
たびたびすみません
appleです
しらねのぞるばさんが実践されている、
①食べ順・②間食のとり方・③就寝のどのくらい前までに夕食を済ませているか
をお教えくださいまさんか?
ちなみに私の場合は
脂質→タンパク質→糖質の食べ順で
4:00起床
弁当・朝食作り・洗濯・掃除など
5:30から6:00の間に
間食 アーモンド5~10gとキムチ20g(キムチは腸内環境を良くするため)
7::00~7:30頃
朝食
食後60分から加藤式降糖メソッドと20~30分のウォーキング
9:30頃
間食 アーモンド10g
12:00頃
昼食
食後60分から加藤式降糖メソッドとウォーキングと買い物
15:00頃
間食 アーモンド15gと生野菜
食後60分から加藤式降糖メソッド
18:30頃
夕食(夕食前に入浴を済ませます)
食後60分から加藤式降糖メソッドと20分ほどウォーキング
21:00頃
就寝
起床から朝食までの時間が長め
夕食から就寝までの時間が短めです
最近は頑張って夕食後3時間まで起きているようにしています
糖質・脂質・タンパク質をそれぞれ110gくらいとっています
身長168cm44kgです
なるべく座りっぱなしにならないよう、家事をこまめに分散させ、自宅マンションの4階まで日に何度も上り下りしています
あと、脂質を多くとると腹囲が増すと聞いたことがあるのですが、ご存じのことがあればお教えください。
確かに欧米の方々はリンゴ型が多いですよね?
質問ばかりで恐縮です
apple 様;
コメントありがとうございます.
>①食べ順・②間食のとり方・③就寝のどのくらい前までに夕食を済ませているか
①食べ順
食べる順番で血糖値の上がり具合がコントロールできる,いわゆる『食べ順療法』については,ネットを見ても断片的な情報ばかりですし,その割には『これで決まりっ』と言わんばかりの断定的な記載もあるので,文献や学会情報をまとめて近日中に記事にしたいと思います.
私自身は,食べ順はあまり意識しておりません. そもそもあからさまに糖質が多い食事はしませんので.しいて言えば,糖質がもっとも多そうなものを最後に1口(で済まないこともありますが)と,これが唯一のルールです.それよりも食事にかける時間をできるだけ長くする,こちらを重視しています.
②間食のとり方
間食はいっさいしません.子供の頃から,『おやつ』という習慣のない家に育ったので,間食をしようと思ったことはありませんでした.
③就寝のどのくらい前までに夕食
私は結構早起き・早寝で,5時には起床,21時にはベッドでイビキをかいているというのが基本パターンです.朝食は6時頃,夕食も18時前というのが原則です. しかし,出張や深夜までの会議などとなれば,こんな原則などすっ飛んでしまいますが.
ですので,夕食は 基本的には寝る3時間前までです.夕食後はお茶・水以外のものは口にしません. 食後に徹底的に歯のケア[★]をしますので,何か食べてしまうと,「う,あれをもう一回やるの?」と面倒くさくなってしまうからです.
[★]徹底的に歯のケア
単なる歯磨きだけでなく,デンタルフロス・歯間ブラシ・ジェットウォッシャー・舌苔スクレーパー・殺菌うがいとフルコースで最後に ミラノール(フッ素 洗口液)です.たっぷり10分かかります.
>なるべく座りっぱなしにならないよう、
私の一日は「できるだけ動くようにしている」としか言い表しようがないです.出張の時は結構歩きます.基本的にエスカレータ・エレベータは避けます.ですが,朝から晩まで会議だと,一日中会議室ということも.特に運動めいたものはしていませんが,ストレッチはどこでもできるので,心がけています.
>糖質・脂質・タンパク質をそれぞれ110gくらいとっています
糖質は100-130g/日と見積もっています.私の計算はおおざっぱで,まずすべての食事には,調味料やら野菜やらで10gの糖質は含むだろう,それに加えて見た目に明らかに糖質のもの(米・小麦)があれば,それらは30gに収めるようにする,ただこれだけです. 蛋白質はやはり120gくらい,脂質は オリーブ油及び大豆製品由来の植物性油が主体で,平均すればやはり100gくらいでしょうが,ただこれらは変動が非常に大きいはず.
>あと、脂質を多くとると腹囲が増すと聞いたことがあるのですが、ご存じのことがあればお教えください。
これは初めて聞く話です.そういう情報を見かけたこともないです.私自身の例でいえば,糖尿病になる前は,メタボ基準はクリアしていましたが,BMI=24くらいまでいったことがあり,この時は腹囲もメタボの85cm寸前でした. ただ糖質制限を実行したところ,体形はかなりすっきりしました.脂質や蛋白質は明らかに以前より多く摂っているのに,腹囲は81cmです.余談ですが,糖質制限を始めた途端にゴッソリと皮下脂肪が落ちたのは,「頭皮」です.つかめそうなくらい分厚かったのが文字通り皮1枚になりました.
間食の習慣がないというのはうらやましい限りです
主人と結婚してから15時のおやつが定番化
妊娠中は1日6~7回の分食
子供たちのおやつ
と、フィーカの習慣が未だに根付いている我が家です
特に主人は結婚当初から、食べたいものを食べたいときに食べたいだけ食べる
生活を続けており、強靭なすい臓の持ち主のようです
日本の食事は一日三食のうち夕食を豪華にするのが一般的なので、我が家もそうしています
自分は味見しかしない料理も主婦として作るわけです
(肉じゃが・ポテトサラダ・かぼちゃの煮つけ・きんぴらごぼう・おでん・筑前煮などなど)
子供たちが大きくなって、一緒に食べる機会が随分と減りましたが、食事の時間が合うときは
一緒に食べます
でも、私は糖質の少ない野菜をたっぷり、少しの米粒麦の主食と、消化に時間のかかるたんぱく質ほんの少しだけにします
早く寝ますからね
その分朝食はタンパク質をたっぷりとります
GVIという指標も、とても勉強になりました
いろいろお教えくださり、ありがとうございました