何という壁!
Ahlqvist博士の論文(01 ,02 , 03 , 04 , 05 , 06 )をてがかりにして,この論文で示された各種の糖尿病のパターン(Cluster)から,自分の糖尿病は肥満亢進タイプではないのだろうと感じました.そこでインスリン分泌を改善するには,いやその前に,そもそも「インスリン分泌不全」とは正確にどういう事象なのか,その定義やデータを整理しようとしました.
ところがこの最初の段階で既にコケています.私は海外の文献の方に信頼をおいているのですが,このテーマについてはめぼしいものが,特に詳細なデータが開示されているものがありません.インスリン抵抗性に関する文献なら山のようにあるのですが.
欧米の研究者は痩せ型糖尿病には無関心
これはどうしたことかと思い,米国 疾病予防管理センター( CDC;Centers for Disease Control and Prevention)の糖尿病データHPなど眺めていたのですが,そこからたぐっていったところ,そもそも欧米の研究者にとっては,【糖尿病】とは【インスリン抵抗性】と同義であり,したがって日本人(東アジア人)にみられる痩せ型・標準体型の糖尿病患者には目もくれていないのだと気づきました.
たしかに,こうして図にしてみると;
そりゃそうだろうなと思いました.
日本人の糖尿病患者の55%はBMIが25未満です. しかし米国の糖尿病患者の84%はBMIが25以上なのですから,痩せ型までは手が回りません.仮に痩せ型を研究しようという変わり者がいても,対象患者を募集する段階で頓挫するでしょう.
実際 文献をかき集めてみても
欧米文献のほとんどは,その対象が肥満糖尿病の人ばかりです.
たとえばタイトルにつられて読んでみたこの文献も( Insulin sensitivity, insulin secretion, and abdominal fat ) 対象者の平均BMIは27-29でしたから,この研究に仮に痩せ型の人が混じっていたとしても絶対少数であり,その人たちの特徴は全体統計処理に埋もれてしまうでしょう.
基本は生データ
とすれば,日本人だけの生データを集めるしかなさそうです. しかし日本の医学文献は,欧米医学誌ほどオープンではありませんから,むしろネットで漁った方が早いかも.
というわけで,このシリーズは,記事をまとめて連投など到底不可能で,不定期連載になりそうです.
このブログを読んだ方で,ご自身の糖負荷試験の実測値をお持ちなら,教えていただくとありがたいです.コメント欄での公開は望まない場合は,「お問い合わせ」でも結構です.
コメント
初めまして
痩せ型糖尿病のデータとして提供させて下さい!
検査日 2016年5月28日
血糖値
空腹時96
30分157
60分208
120分240
インスリン
空腹時4.1
30分18.3
120分29.3
56歳(女性)身長145cm体重39kg
他にも何か必要でしたら
腹黒テニスの血糖のブログにコメントお願いいたします。
しみ 様;
ありがとうございます.
いつもブログを拝見していますが,腹黒テニス(2)があるということは(1)があったということでしょうか?
ひょっとして,ネット際にチョロリと落とすアレでしょうか?
ドロップショットですね(笑)
錦織圭くんの得意技ですが私は苦手でした!(1)はブログ始めはアメブロでしたので今のムラゴンは(2)にしました。
ブログはお恥ずかしい内容ですがよろしくお願いいたします
若い頃は私もテニスやってました.「サーブのスピードだけはマッケンロー並み」と恐れられましたが,球がどこに飛ぶかは本人もわからない,という状態なので,早々に諦めました.
はじめまして
いつも興味深く拝見しております。
私十年来の境界型、緩めの糖質制限で
HbA1c6.1あたりを行ったり来たりしています。
BMI15.6 という痩せ、60代後半、女性です。
ちなみに、10年前は標準体重でした。
昨年10月の75gOGTTでは、(時間、血糖値、インスリン順で)
0分 106 4.3
30分 161 29.5
60分 191 33.8
120分 131 24.7
でした。参考になれば幸いです。
うさみみ 様;
お早うございます.
ありがとうございました.
やはり空腹時インスリンからして低めですね. 現在データをお寄せいただいている方に,このパターンが多いです.
何かまとまったことが言えそうになれば,ブログ記事にいたします.
追記です。
検査時の身長は 159cm。体重は 39kg でした。
うさみみ 様;
ありがとうございます. BMI=15.4は もう少し体重を増やしたいですね.
おはようございます、東郷です。
データ提供させてください。
62才 173cm 65kg Ⅱ型糖尿病歴約15年。
リンゴ型肥満(75kg)から昨年秋までの1年間で
標準体型に(筋トレ+テニス)。
2018年10月
空腹時 インスリン3.5 血糖108
30分 9.5 167
60分 16.1 188
120分 21.1 144
2019年3月
空腹時 インスリン2.7 血糖 114 C-ペプチド1.2
30分 4.4 140 1.5
60分 7.9 199 2.3
120分 14.5 183 4.5
よろしくお願いします。
東郷 様;
貴重なデータをありがとうございます.
私が もし,この血糖値・インスリン分泌パターンだけを見せられたら,てっきり痩せ型の日本人女性だと思ったでしょうね.
いつもブログ読ませてもらってます。私のデータです。42歳男166cm69kg
空腹時 血糖値 119 インスリン 3.3
30分 血糖値 259 インスリン 12.7
60分 血糖値 338 インスリン -
90分 血糖値 310 インスリン -
120分 血糖値 301 インスリン 17.0
私の糖尿病はどの様な状態でしょうか、現在糖質制限により薬なしで、HBA1C 5.8 空腹時血糖値110前後です。
玉ちゃん 様;
ありがとうございます. このパターン(=空腹時・糖負荷試験中 一貫してインスリンが少ない),私は日本人女性に特有と思っていたのですが,こうしてデータが集まってくると,実は男性でも多いのですね.近日中に 集まった全データを総覧する予定です.