2型糖尿病って本当にあるのでしょうか? その1

糖尿病の分類

糖尿病は,現在下記のように分類されています.

  • 1型糖尿病
  • 2型糖尿病
  • 妊娠糖尿病
  • その他糖尿病(遺伝性,薬物性など多数あり)

1型,2型って運転免許でもないのに どうしてこんな名前になったのでしょうか?

もともと ADA/WHOの IDDM(Insulin Dependent インスリン依存性), NIDDM(Non-Insulin Dependent インスリン非依存性)を,それぞれ踏襲しただけです.インスリンの注射が不可欠かどうか,という治療法で分類しただけなのです.つまり,病理や病態を基準にした分類ではありません.

病気の分類法

そもそも病気の分類法というものは,いくつもあります.たとえば;

  • 病態による分類(高血圧,痙攣 など)
  • 発病原因による分類(感染症,動脈瘤破裂 など)
  • 発病メカニズム(機序)による分類(心筋肥大,動脈硬化など)
  • 症状部位による分類(心臓病,腹痛 など)

などはまあわかるとして(もっともこれだけでも混乱は十分考えられますが),適用法律による分類(健康保険対象か,難病指定疾患か など)というものまであり,これだけで1冊の本が書けるほどややこしいもので,その割にはこれといった決め手に欠ける議論に終わることがほとんどです.ご興味のある方は文献でもお読みいただくとして,ここでは 糖尿病の分類に限って考えてみます.

おはじき 並べ

昨年 従来の糖尿病分類に疑問を投げかける論文が発表されました.Lancetに掲載されたものなので,さすがに内容があります.

Emma Ahlqvist et al.,
Novel subgroups of adult-onset diabetes and their association with outcomes: a data-driven cluster analysis of six variables
The Lancet Vol.6(5) p361-369, 2018

Data-Driven Cluster分析により,糖尿病の新しい分類を見出したという報告です.

Data-Driven Cluster分析とは

何やら難しそうな名前ですが,原理は簡単で,しかも直感的にも理解しやすい方法です.
小さな女の子がオハジキを並べて遊んでいるのをみかけることがありますが;

一見するとバラバラなオハジキも,形が似ている,色が似ているなどと似たものどうしで分けるとこうなります.

たしかに分けられたグループの中だけをみると,一つとして同じものはないのですが,しかし 他のグループと比べると,『たしかに,これは似たもの同士の集まりだな』と認識できます.

Ahlqvist博士が子供の頃にオハジキ遊びをしたかどうか(博士は女性です)は不明ですが,Data-Driven Cluster分析も このオハジキ遊びとまったく同じです.オハジキを色や形で分類したように,糖尿病の6つの検査指標 [年齢,BMI,HbA1c,HOMA2-β値,HOMA2-IR値,GADA(*)の有無]だけで,新たに糖尿病と診断されたスウェーデン人13,000人(ANDIS)のデータを分類してみたのです. ただし 実際のオハジキ遊びがそうであるように,この場合も最終的にいくつのグループに分類されるのかは,とりかかった最初の段階では不明でした.

(*) GADA= 抗GAD抗体;自己免疫型糖尿病の指標

そこでコンピュータ上で,最適なグループ分けになるように膨大な組み合わせが評価されましたが,その結果は驚くべきものでした.

[その2に続く]

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