2型糖尿病って本当にあるのでしょうか? その3

Ahlqvist論文の波紋

この論文では,糖尿病分類の精緻化という意味だけではなく,臨床上 見逃せない重大な知見が明らかにされました.即ち;

  • 従来『2型糖尿病 』 でひとくくりにされていたものが,実は まったく別のメカニズムの4つの病気を含むこと
  • 特にSIRD と SIID は,糖尿病の発症原因が異なるという病理上の差だけでなく,その後の病気進行で,どの合併症リスクが高まるのかにも差があること.すなわち SIRD(重度インスリン抵抗性)は 腎障害のリスクがもっとも高く, SIID(重度インスリン分泌不全)では網膜症のリスクがもっとも高いこと

従来の考えでは,糖尿病腎症と網膜症とは,どちらも糖尿病の「微小血管障害 」 としてひとまとめに考えられていて『発症コースによって違いがある』とはしていませんでした.『腎機能低下? 網膜症? そりゃ糖尿病だからねぇ』で済ませてきた,従来の医療の痛いところを突いたのです.

違う病気なら治療法も違うはず

さらにAhlqvist博士の追求は,これだけにとどまりません.

この新分類で見ると,それぞれのClusterに応じた最適の投薬がなされてしかるべきなのに,Cluster1(ほぼ1型糖尿病;これはインスリン投与が当然)を除いて,どのClusterの患者にも(2型だからということで)同じような投薬で済ませていることの問題点を露わにしてしまいました.

具体的には,SIRD は高度なインスリン抵抗性が病態なのですから,その病態にFocusしてメトホルミンによる強力な治療を行えば奏効するはずなのに,『2型糖尿病』とひとまとめに呼んでしまったために,平均的には他の型と同程度の投薬しかなされていませんでした.

『異なる病気に同じ投薬でいいのか』というわけです

異論・反論もあるけれど

ここまでコケにされたら,さすがに従来医療派も黙っていません.この論文への反論もいくつか出ており;

  • たった6個の指標で分類しているが,他の指標を持ってくれば別の結果がでるのではないか
  • 命名法の変更だけ.実際の臨床にあまり有用とも思えない
  • そんなことは昔から知っていた

等々です. しかし,これらは どこかの国の野党と同じで,揚げ足取りのための批判に過ぎず,対案を出せておりません.

どう考えればいいのか

論文の内容とその意義は以上の通りです. そこで,次回は この論文を読んで 管理人が考えたことをまとめてみたいと思います.

[その4 に続く]

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