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糖尿病と遺伝[6] 失われた遺伝率

計算が合わない技術の進歩により,一人の人のすべての遺伝情報を余すことなく全解析することが,安価に しかも 短時間で行えるようになって,『糖尿病に関連する遺伝子』の発見が続々と報告されるようになりました.しかし,それらの遺伝子の『遺伝力(遺伝...
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糖尿病と遺伝[5] 遺伝の力

かつて糖尿病は,形質遺伝を研究してきた学者にとっては悩みの種でした.古典的なメンデルの法則に基づき,『糖尿病の原因となる遺伝子』の存在を仮定して,どれほど多数の家系を詳細に調査しても,実際の糖尿病有病者の発生を説明できないのです. メンデル...
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糖尿病と遺伝[4] どうしてそうなるのか

どうしてそうなるのか現在発見されている『2型糖尿病に関連する遺伝子』は300~400もあるというのが前回記事でした.ヒトの遺伝子データベースで糖尿病関係のリストを見ると;Gene-Database(C) NCBIこのように,現在までに判明し...
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糖尿病と遺伝[3] 答えはすぐに出せる…はず

答えはすぐに出せるヒトのDNA全配列が解析され,しかも それが短時間で安価に行えるようになると,世界の糖尿病医学者は色めき立ちました.正常な人,そして糖尿病の人のDNAを片っ端から全解析して,『一致しない部分』を探し出せば,その一致しない部...
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糖尿病と遺伝[2] 家系図からコンピュータに

遺伝とはメンデルの法則によって,親から子に形質を伝える遺伝子というものが存在しているらしいことは古くからわかっていました. ただし そのメカニズムは不明でした.一人一人の遺伝子を詳細に解析できるようになったのはつい最近のことであり,それまで...
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糖尿病と遺伝[1] はっきりせんかい

2型糖尿病と遺伝ここで取り上げる『遺伝』とは,いわゆる『遺伝性糖尿病』は含みません.つまり 原因が特定の遺伝子の変異又は異常であると解明されていて,完全にメンデルの法則通りに遺伝する MODY(Maturity Onset Diabetes...
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インスリン抵抗性を考えてみました[11完] HOMAよりも役に立つ指標

ここまで,インスリン抵抗性とは何か,それはどうやって測定されるのか,そしてインスリン抵抗性の指標としてよく使われているHOMA指標を考えてきました.HOMAのまとめインスリン抵抗性を本当に実測しようとすれば,ちょっと怖いクランプ試験しかあり...
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インスリン抵抗性を考えてみました[10] HOMAだけでは説明できないこと

HOMAの概念HOMAの概念図HOMAは人体の血糖値が平衡に達する状態を完全に数学モデル化したものです.脳も含めた各臓器の応答動作は,自分の周囲の血糖値及びインスリン濃度のみで決定される.その動作は精密ではあるが,完全に機械的に応答するもの...
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インスリン抵抗性を考えてみました[9] 指標は換算値ではありません

HOMA=HOmeostasis Model Assessment(恒常性モデル評価)は,クランプ試験のようにインスリン抵抗性・インスリン分泌能を実測するわけでもないし,間接測定法ですらありません.HOMAは,クランプ試験と『よく相関する指...
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インスリン抵抗性を考えてみました[8] HOMA-βは要注意

HOMA-β 日本人には 要注意このシリーズでは,インスリン抵抗性と並んで HOMAの もう一つの側面=HOMA-β(インスリン分泌能)については 故意にふれてきませんでした. なぜならHOMA-βは日本人に適用する際には 特に注意が必要だ...
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インスリン抵抗性を考えてみました[7] 現在はHOMA2に

HOMA-R式のメリット・デメリット精度はかなり劣るものの,1回の採血で患者の インスリン抵抗性を推定できる HOMA-R式は,使い勝手のいいものです.しかし,以下のような問題もあります.HOMA-R式は,クランプ試験などの実測値データから...
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インスリン抵抗性を考えてみました[6] 単純肥満性糖尿病が『治る』ワケ

HOMAのグラフは,Ahlqvist分類で,MOD (=Moderate Obesity Diabetes:軽度肥満糖尿病)が なぜ比較的 『簡単に治る』のかも説明してくれます. 私はこれを『単純肥満性糖尿病』と呼んでいます空腹時血糖値が1...
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インスリン抵抗性を考えてみました[5] HOMAの計算結果

『血糖値変動にかかわるすべての臓器の動作を数式で表して解析する』これが HOmeostasis Model Assessment(恒常性モデル評価)です.血糖値が高くなれば,インスリン分泌が多くなり,各組織での糖取り込みが増えます. その結...
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インスリン抵抗性を考えてみました[4] クランプをHOMAで推測

インスリン抵抗性を正確に測定するには,まかり間違えば命掛けのクランプ試験しかない,というのが前回記事 でした.しかし,この方法を実際の糖尿病患者の診断に使うわけにはいきません.そこで 考え出されたのが HOMAです.Homeostasis ...
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インスリン抵抗性を考えてみました[3] 実際に測ってみましょう

クランプ試験インスリン抵抗性を実測する方法は,『クランプ試験』しかありません. それ以外にも 間接的な測定法や 推測法はあるのですが,直接測定できるのはこのクランプ試験だけです.糖尿病医学の大御所 DeFronzo博士が考案しました.今から...
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インスリン抵抗性を考えてみました[2] 肝臓のピンハネ

前回記事の図を作成していて気づいたのですが,ネット情報や,病院が患者向けに作成したパンフレットでは,話を単純化するために,『食事を消化・分解して小腸から吸収されたブドウ糖(血糖)などの栄養分は,小腸からそのまま全身を循環している』などと解説...
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インスリン抵抗性を考えてみました[1]

インスリン抵抗性この言葉は糖尿病患者なら,一度は主治医から聞かされた言葉ですね.せっかく食後に膵臓がインスリンを絞り出してくれているのに,体内の筋肉などの細胞がそれを受けとって 血糖を吸収してくれない.これが『インスリン抵抗性』なのです(ド...
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【続】[2型糖尿病]は存在しない[11完] 違う病気を同じ名前で呼ぶ弊害

前回記事ではBMIが31以上という高度肥満の人が,2週間の肥満治療(=超低カロリー食+運動療法)で,体重が 3%減っただけなのに,糖負荷試験で『糖尿病型』から『境界型』に改善しました.しかも血糖値が下がったにもかかわらず,インスリン分泌量は...
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【続】[2型糖尿病]は存在しない[10] 簡単に治る『単純肥満型糖尿病』

簡単に『治る』単純肥満型糖尿病昨年の第63回 日本糖尿病学会でこういう症例が報告されています.短期間の減量により耐糖能の改善が糖負荷試験で示された一例第63回 日本糖尿病学会年次学術集会2P-57-450代後半の女性の方です.この通りの高度...
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【続】[2型糖尿病]は存在しない[9] 誰も気づかなかったのか

【以下の記載は,Wagner論文の内容紹介ではなく,しらねのぞるば個人の推論(=暴論)ですので,そのつもりでお読みください】危険なSIRD糖尿病予備軍の段階では,たしかに多少血糖値は高いものの,HbA1cもそれほど悪くないので,『肥満の人に...