パラドックスとは『逆説的真理』です. 直観的には『そんな馬鹿な』と思えるけれど,実は正しいという事象を指します.
本ブログでも『富山パラドックス』を取り上げたことがありました.
都道府県別 『経済的豊かさ』ランキング でも堂々の2位[PDF] ,しかも新鮮な魚をふんだんに食べられる富山県なのに,なぜか 糖尿病率(全国 9位),メタボ率(全国10位)が高いという不思議な話でした.
肥満パラドックス
この記事で,データ栄養学の権威;東大 佐々木敏教授が,『日本糖尿病学会も いつまでもカロリー制限食にこだわっていないで,今 世界的に注目されているObesity Paradoxに目を向けるべきだ』と苦言を呈したことを紹介しました.
“Obesity Paradox“とは『肥満パラドックス』のことです.従来の医学的常識では,【肥満は無条件に悪】であって,健康面では何もいいことはないとされてきました.
しかし この図をご覧ください.
縦軸は総死亡率,横軸は BMIです.
ご覧の通り,たしかに40代までの若い世代では肥満と共に死亡率が上がっていきます.
しかし 60代を越えると むしろBMI=25~30くらいがもっとも死亡率が低く,それより太っていても痩せていても死亡率は高くなるという報告です.
つまり 日本では理想的とされていた BMI=22付近,そして『痩せていることは,肥満よりは健康的だろう』と思われていたBMI 20未満を見ると,肥満と呼ばれてきた人よりもはるかに死亡率が高いのです.これが
肥満パラドックス Obesity Paradox
なのです.
前述の講演会で,東大 佐々木先生は,『今 世界ですごい勢いでObesity Paradoxの論文が増えている』と紹介していました. その通りです.
これは 医学文献のデータベース:PubMed で”Obesity Paradox“をKey Wordにして検索した結果ですが,たしかに2000年 以降,猛烈な勢いで 論文が増えていることがわかります.
我々糖尿病患者は,これまで『肥満ガー』とか『食の欧米化ガー』という言葉を 常に聞かされてきました. BMI=22こそが日本人全員が目指すべき目標であるとされてきました. それを下回る分には構わないが,BMI=22を上回るのは非国民(古いっ)という扱いでした.
いったいどちらが正しいのでしょうか?
[続く]
コメント