英国とオランダとで 新たに2型糖尿病と診断された人を,その特徴から分類してみたところ,同じ『2型糖尿病』という病名ではあっても,実は 異なる5種類の病気が混在していることが分かりました
実際 これら5種類(グループ)の人の,特徴は 下図の通り 相互に異なっており,これらを一つの病気であるとして,同じ治療法を適用しては無理があることが推測されます.
そこで,このグループ別に,糖尿病と診断された時点から2年以内に行われた治療状況をまとめてみました. ただし 英国とオランダでは 医療制度などが異なるので,共通して解釈できるように,治療パターンを下表のように おおまかにコード化しています.
英国/オランダで 治療の初期(診断時点から2年以内)の状況はこうでした.
インスリン分泌不足が原因で 初期からHbA1cが高い SIDDを除けば,それ以外の4グループは 分類に無関係に,似たような治療パターンでひっくるめられてしまっていることがわかります. ただし,英国とオランダでは まるで異なることがわかります.英国では,糖尿病=心疾患リスクという考えから,心血管疾患(CVD)にかかわる投薬をまず優先しているのに対して,オランダでは とにかく糖尿病の投薬(Step 1~3)を最初から積極果敢に行っています.
ところがこの人達を15年間追跡してみたところ,このように変化していました.
初期には あれほど異なっていた両国の治療スタイルが,15年後には なんとなく似通ってきたことがわかります.
特にその傾向が著しいのは MDH(高HDL 軽度糖尿病;Mild Diabetes with high-HDL)のグループです.
英国(左)でも,オランダ(右)でも,初期には 相互にかなり異なる治療法だったのに,15年後には ほぼ同じ治療法に収斂しています.
別に英国とオランダの医師が協議したからこうなったのではなく,それぞれの患者の主治医が 経過を見ながら 良かれと信じて 投薬を選択していったら,同じところに落ち着いたのです.
この結果から,2型糖尿病のグループ分けを意識していなくても(※),医師が 個々の患者の病態を注意深く観察していれば,それぞれに適切な治療法が選択されていくであろうことは期待できる,と著者は述べています. しかしながら,ではグループ分けが不要なのかといえば,そうではないとも主張しています. それは『合併症』の経過が グループで大きく違うからです.
(※)この研究のデータは 2型糖尿病にいくつものパターンがあると知られていなかった,過去のものです)
コメント
円グラフを眺めていて気づくのは、SU薬・インスリンの処方数でしょうか。
オランダではSU薬・インスリンを積極的に処方する感じですね。
一方、イギリスはOther OADを積極的に処方しているようです。欧米ではあまりDPP-4iは処方されないイメージがあるので、増えているのはSGLT2iとGLP-1RAでしょうか。
これらの薬剤は、SU薬やインスリンに比べると新しいですよね。オランダでは新しい薬剤の処方には消極的なんですかね?
DCSは 1998–2019年に登録された患者,そして GoDARTSは 2003–2018年にエントリーされた患者ですので, いずれも 糖尿病の新薬が続々と登場してきた2010年頃よりもやや古いデータとなっています.初期に SU剤が見かけ上よく使われているのはこのせいでしょう.また追跡期間後半で Other OADが増えるのは新薬登場効果も寄与しているでしょね.