グルコキナーゼ活性化薬[2]

第2相試験

前回記事 の通り,メルクが開発したグルコキナーゼ活性化薬 MK-0941の効果は目覚ましいものでした.その後も 数々の動物実験など,そして健常者を対象とした 第1相試験でもすばらしい血糖値低下効果を示しました.

そこで,新薬承認に向けて 次のステップである,第2相試験 が行われました. 実際の糖尿病患者にMK-0941を投与して基本的な効果・副作用の有無と適正投与量を確認する実験です.

対象患者は,27ヶ国 101の医療機関で 既にインスリン グラルギン(+メトホルミン)で治療中の2型糖尿病患者(21-70歳) 587人です.第2相試験にしては規模も大きく,ほぼ第3相試験に近いデザインです.最初からグローバル展開を狙っていたことがよくわかります.

対象患者の選定基準は,インスリンを使用しているにもかかわらず,平均HbA1cが約9%でそれ以上下がらなくなった人達です.この患者を5群に分けて,14週にわたり それぞれ プラセボ/MK-0941 10mg/同 20mg/同 30mg/同 40mgを1日3回食前投与しました. さらにその後の40週(合計54週)は治療期間として,患者が認容できる限り最大40mg/dlまで増量していきました.

最初の14週までの結果はこの通りでした.

MeiningerFig. 1Aを訳

前回記事の動物実験結果と同様に,投与量に対応してHbA1cがきれいに低下しています.

ところが

ところが更に投与量を増やしつつ30週まで治療を続けたらこうなりました.

MeiningerFig. 1Bを訳

意外にもせっかく低下した HbA1cがリバウンドし始めたのです.しかも投与量を増やしていった人ほどリバウンドが大きくなりました.

この試験のエンドポイント(=効果判定指標)は14週時点における初期からのHbA1c低下量ですから,たしかにその点では『効果あり』でした.しかしその効果が30週時点でほぼ帳消しになるのでは,治療薬としての意味がありません. 10mg投与群だけは まだHbA1cが低く保たれていますが,これも他の投与量群の趨勢からみて リバウンドしてくるのは時間差だけの問題とみえます.

しかもそれだけではありませんでした.下図は 14週時点での 中性脂肪(TG),体重変化率,そして収縮期血圧の,いずれもプラセボ対比の変化です

MeiningerTable2より作図

中性脂肪や体重が増加し,そして収縮期血圧(SBP)が上昇する,これらは明らかに『肝臓に何かまずいことが起こっている』ことを暗示しています. それでも血糖値低下効果が持続していたのならまだしも,その効果すら消失しつつあるというのでは,このまま試験続行する意味なしとして30週で途中打ち切りとなりました.

MK-0941というグルコキナーゼ活性化薬は,投与開始時点では まるでインスリンかと思う程のすばらしい血糖値低下効果があったのに,投与を継続すると その効果は消えていったのです. いったい何が起こったのでしょうか.

[続く]

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