2022年 糖尿病治療は変われるのか[1]

2022年あけまして おめでとうございます.

昨年の年始では 2021年の予測をたててみました.
2019年に日本糖尿病学会が発行した『糖尿病診療ガイドライン 2019』で打ち出された『糖尿病の食事療法の個別化』という新方針がどのように実行されていくのかを予測したものです.

また,学会の動きだけでなく,実際に糖尿病患者が通院している全国のクリニックで,『糖尿病診療ガイドライン 2019』に沿った栄養指導が本当に行われているのかも調べました.

2021年のおさらい

そこで,実際に2021年中にどんな変化があったのか(又は なかったのか)をまとめてみました.

学会では

あれから1年,振り返ってみれば 2021年中には さしたる変化はみられませんでした.

たしかに 2021年3月に開催された 講演会『第55回 糖尿病学の進歩』では,食事療法に関して『食品交換表』という言葉は一切使われなくなりました.

また,30年近くにわたって,学会が主張してきた『炭水化物 50-60%/蛋白質 15-20%/脂質 20-30%は理想の栄養比率である』という表現もなりをひそめました.

さらに 2021年5月に開催された『第64回 日本糖尿病学会 年次学術集会』の『シンポジウム22:これからの糖尿病食事療法における課題と展望』では,

糖尿病患者に 一律・画一的な食事療法を押し付けるのは 不合理である

と 繰り返し強調されました.

いずれも総論としては,『糖尿病食事療法の個別化』を後押しするものです. その点において,『糖尿病診療ガイドライン 2019』の新方針はもはやゆるぎないものになりました.これが 2021年の最大の特徴でしょう.

ところが 現場では

しかしながら,糖尿病治療の最前線,つまり 各病院・クリニックでの栄養指導・食事療法を具体的にどうすればいいのか,その指針は出されませんでした. ですから,現場では たとえば以下のような混乱が起こっています.

日本糖尿病学会:『糖尿病の食事療法は,患者をよく見て個別化してください. 以上』

管理栄養士:『ええっ? じゃあ今まで,患者に「食品交換表をきちんと守ってください.例外は認めません」と言ってきた私たちはどうすればいいの?』

さらに,これだけフリースタイル リブレが普及してきた以上,全国の病院では患者からこう聞かれることも多いでしょう.

患者:『先生,リブレをつけてびっくりしました. うどんを食べたらこんなに血糖値が上がります.どうしたらいいですか?』

主治医:『ええと,ベジファーストなんかどうでしょう...』

患者:『きつねうどんを食う前に,サラダを食べろというのですか??』

主治医:『いやだから,一口 10分 よく噛んで...』

患者:『きつねうどんを よく噛んでたべるのですか??』

吉本興業のお笑いの舞台ならば,いいネタになるかもしれませんけどね.

ここに挙げた通り,学会は『食事療法は個別化されるべきだ』と,漠然とした総論を述べているだけであり,実際にどうするかは医療現場に丸投げです.

したがって,学会の討論会で 会員からこのような意見が出されるのも当然でしょう.

今後 個別化食事療法指導の具体的な指針は出るのですか?

第55回 糖尿病学の進歩

そうです. 2022年,日本糖尿病学会は この質問に答えなければならないのです.

コメント

  1. 匿名 より:

    あけましておめでとうございます。
    退職して時間が自由になったはずなのに、今日は何曜日?週末まであと何日?とか考えてしまいます。30数年間の習慣はなかなか抜けませんねw

    >食事療法は個別化されるべきだ

    確かに一理あると思います。
    動物(菌~哺乳類まで)実験では炭水化物の多い食事の方が長寿とされています。ただし、繁殖力は落ちます。
    高タンパク食の方が繁殖力は上がるようですが短命なのだそうです。
    そして、生物の多くは、タンパク質を一定量摂取するように食欲が働くようです。
    要するに個の存続よりも種の存続を優先するようにプログラミングされているという事になります。

    ※超加工食品と言う人工的な食品は低タンパク、高炭水化物で製造原価を抑え、かつ大量に消費するように設計されているためタンパク質を一定量摂取するためにどんどん過食して肥満します。それが、現在のアメリカです。高炭水化物ですが、過食では長寿にはなりません。

    高炭水化物を食べても糖尿病にならず、長寿になれるかどうかはDNAによって違うはずです。健康な食事と言うのはDNAの違いによって違うのでしょう。
    そういう意味で「個別化されるべき」と言うのは一理あるとは思いますが、「食事療法は個別化されるべきだ」では、具体性がなく何を実践すればよいか、これでは説明になっていませんね。

    • しらねのぞるば より:

      >今日は何曜日?

      そうですね.今や曜日を判定するのは『今日は生ごみの日だったな』ぐらいになってしまいましたw

      >具体性がなく何を実践すればよいか

      これまでは,『食品交換表をきっちり患者に守らせろ. これをいささかでも変更するのは不可.もちろん糖質制限はもってのほか』と強調してきたのですから,全国の病院・医師・管理栄養士のホンネは『今さら何を言ってんだか』でしょう.彼らが求めているのは『患者にどう説明するの? その指針を示してほしい』なのです.