[第55回糖尿病学の進歩]感想記事(2) 名前が消えた

全部で156本もある『第55回 糖尿病の進歩』の講演は,一度に全部を聴講するのは不可能です.

そこで,まず食事療法・栄養指導関係の講演から順に聞いております.

各講演の内容は,よりすぐりのテーマを その分野の第一人者の先生が講師となって解説してくれる,しかもそれを好きな時に好きな順番で聴ける,考えてみればリアル学会よりも 随分 贅沢な学会です.これで 11,000円は安いと思います.

『な,ない....』

ところで,何本か講演を聴いたところで,どうも勝手が違う,なにか違和感を感じました.
よくよく考えてみると,今までの日本糖尿病学会や日本病態栄養学会で,いやというほど耳にするあの言葉

食品交換表

という言葉が,まるでこの世にそんなものが存在しないかのように,講演者の誰も口にしないのです.
食事療法関係の講演なのに,ですよ.

これはひょっとしたらと思って,今回の『第55回 糖尿病の進歩』の講演要旨集,そして過去の『日本糖尿病学会 年次学術集会』の抄録集,これらに登場する『食品交換表』という単語の数を数えてみました. 全文に単語検索をかければ,もれなく数えられます.

その結果はこうでした.

消えた『食品交換表』

『食品交換表は糖尿病の唯一の食事療法である』という意見が幅をきかせていた,2012~2014年ごろには,講演・シンポジウムでは,毎回10~30回も『食品交換表』という言葉が使われていました. 学会での症例報告でも同様ですから,過去の学会行事では,合計50回以上も登場していた『食品交換表』という単語が,今回の『糖尿病の進歩』では.たった1回,それも『妊娠糖尿病の管理と治療Update2021』[3L-1-3]というテーマの講演だけなのです. これは通常の糖尿病患者の食事療法の話ではありません.

つまり,日本糖尿病学会の公式学術行事の食事療法に関する抄録から『食品交換表』という単語が消えたのです.

ただし,講演要旨集には登場していませんでしたが,講演『糖尿病食事療法における食習慣の重要性』[4L-1-11]では,スライドに『食品交換表 第7版』が登場していました.

しかし,それは『かつてはこうだったが...』という過去形の紹介であり,現在の食事療法ではないという扱いでした.

じゃあ どうすればいいの

『食品交換表』は,過去のものという扱いになりました. たしかに そこに書かれていたカロリー設定は『実測値からかけ離れていた』と,学会自ら認めたのですから,それは当然でしょう.

しかし,この瞬間も全国の病院には『食品交換表』が存在しており,患者向けの栄養指導教材は,すべて食品交換表を前提にして作られたものなのです.いったい現場ではどうすればいいのでしょうか? その指針はいつ示されるのでしょうか?

[感想-2]

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