SGLT2阻害薬は「やせ薬」か[4]

カロリーと体重は正比例ではない

前回の記事で,【カロリーと体重は正比例しない】と述べました.そこで;

SGLT2阻害薬の効果を実際に計算してみました

年齢 40歳,身長 172cm,体重80kgの人が,その体重と平衡状態にあるEnergy Flux(つまり 消費=摂取カロリー)は前回記事の式[下に再掲]から 3,329kcalとなります.

Bw:体重(kg)  Ef:体重とバランスするカロリー(kJ)

SGLT2阻害薬によって,毎日 ブドウ糖70g=280kcalが排泄されていくとすると,毎日の実質摂取カロリーは 3,329 – 280 = 3,049kcalになります.この状態が継続したら,体重がどうなるかを計算してみました.数学に強い人なら漸化式でも起こすのでしょうが,そこまでしなくてもExcelで原始的に計算できます.

結果はこの図の通りです.

SGLT阻害薬で期待できる体重減少

【毎日280kcal少ないから,脂肪が毎日40g減っていく】のではないのです. したがって 青い点線のようにはなりません.

カロリーが減る
→わずかに体重が減る
→その体重とバランスするカロリーもわずかに減る
→280kcal少ない効果が少し薄れる
→ 体重低下が少し鈍る
→ …..

の繰り返しで,この食事を無限に続けても体重はあるところ(摂取カロリー= 消費カロリー=3,049kcalにバランスする体重)で『底打ち』になるのです.計算ではこの人の体重は75.2kg以下には永遠になりません.

最初のペースそのままで体重を落としていこうとするなら,摂取カロリーを『最初に設定した3,329kacl – 280kcal』ではなくて,『その時々の体重にバランスするカロリー – 280kcal』と常にジリジリと下げていかなければならないのです.

つまり,バランスするカロリーをその都度最新の体重に設定しなおして,そこからさらに280kcalを差し引いた値に落としていかないといけないのです.そうすれば,最初のペースのままで体重は低下していくことになります

厚労省もすでに公表しています

以上のことは,すでに 厚労省の『日本人の食事摂取基準2015』p.55-57 及び『日本人の食事摂取基準2020案』p.62-63 にも詳しく解説されています.

[5]に続く

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