もう待てない

WeAreNotWaiting

子供が屋外にいる時,あるいは夜間睡眠中に突然低血糖に襲われたら…
誰も気づかぬままに亡くなってしまうかもしれないと思うと,母親は心配で胸が張り裂けそうになるでしょう.

NightScout プロジェクトとは,その不安を解決するために米国で行われている非営利のプロジェクトです

連続血糖値測定器(CGM)が無線で送信する血糖値情報をスマホに送り,更にスマホからインターネットを通じてWEBサーバーに転送するというシステムです.子供が低血糖に陥ったら,家族や主治医がWEBブラウザからのアラームでこれに気づき,直ちに駆けつけられます.

子供の人工膵臓を手作り

更に進んで,これと市販のインスリンポンプとを組み合わせて,血糖値の高低に応じてインスリン注入量を自動調節できる,人工の膵臓を作った母親がいます.

糖尿病管理で親,市販品待てず

この手作りシステムは完全に公開されており,ハードウエアの得意な人,制御ソフトを書く人などがボランティアで協力して,完成度を高めようとしています.米国の法律では,医療機器であっても,自分で作り自分で使うのであれば法規制は受けません.

CGMとインスリンポンプとを連携させれば,現在の技術では十分実現可能なのですが,開発は進められているものの,まだ完成品は販売されていません.

ボトルネックは,FDA(米国食品医薬品局;日本の厚労省に相当)の医療機器認証を得るのが非常に困難なことです.FDAとしては,インスリンをコンピュータ任せで完全に自動注入するシステムが,仮に暴走あるいは故障した場合には,その瞬間自殺マシンになってしまう危険性を完全に回避できることを求めているからです.

また現在のインスリンは超速効型でも15分程度のタイムラグがあり,食後の血糖値急上昇・急降下とのタイミングズレによっては,注入遅れにより危険なインスリン過剰注入を引き起こす恐れがあります. システムのレスポンスは速くできますが,それに適合した,現在よりももっともっと速効性のインスリンがないと実用化できないのです.

完成すればすべての糖尿病患者に福音

とはいえ,ここまで問題がFocusされているのであれば,iPS細胞や膵臓移植よりも,実現性は見えてきているということでもあります.どこの国でも医療機器の法規制は厳しいのですが,リスクを恐れず果敢に挑戦する米国の気風には敬意を表します. Innovationとは こうやって実現されてきたのですから.

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