糖質制限食も9年目に ~カロリー計算~

『糖質制限食を続けている期間中,日々の食事のカロリーはどう設定していたのか?』 という ご質問もいただきました.

『糖質制限ならカロリー無制限』などと言う無責任な情報がネットに流されていますが(多くは 糖質制限に反対している人から),もちろんそんなことはありません.

糖質制限食では,カロリー制限食のような,あの電卓片手の神経質な計算までしなくてもいいというだけなのですが,私の場合は それとはまったく別の意味で『カロリー計算・把握はいっさいしておりません』

カロリー計算をしない理由

たとえば,ここに正確に100gのビーフ ペッパーステーキがあるとして,このカロリーはどう考えればいいのでしょうか?

(C) K野 さん

食品交換表では,和牛及び輸入肉のそれぞれの複数の部位について,1単位(80kcal)相当分の肉の重量が違うので,注意するように書いてあります.(食品交換表 第7版 表3 62頁)

この分類に従うと,カロリーで分類した場合,牛肉は実際には3種類しかないことになります.1単位=80kcalに相当する肉重量は,30,40及び60gの3種しかないことになっているからです.部位によってはカロリーに2倍の差が生じるということです.ただし,注意書きとして,ここに記載した牛肉のカロリーは,脂身を除いた数値であるとも書かれています.

管理栄養士にお伺いします

ですが,このブログを読まれている管理栄養士の方がおられたら,ぜひ教えておただきたいのですが,霜降りA5和牛肉から,いったいどうやって『脂身を除く』のでしょうか? プロフェッショナルである管理栄養士ならやってのけるのかもしれませんが,私には無理です.また 毎日の栄養指導で,脂身を除去しきれなかった牛肉のカロリーはどう見積もっておられるのでしょうか?

食品交換表の,牛肉をたった3種類に分類する方法は 間違っています

厚労省の日本食品標準成分表 を見ると,牛肉は実に109種類にも分類されています[部分;下図].これら109種類の牛肉は, カロリー・蛋白質・脂質がすべて異なるのです. この表の最後にもあげましたが,もっともカロリーの高い 『交雑牛肉 リブロース』は100gあたり 831kcal,一方もっともカロリーの低い『子牛肉 リブロース』は 100gあたり 101kcal,つまり8倍以上のカロリー差があるのです.これらの肉を使うときには,食品交換表のどの分類にあてはめればいいのでしょうか?

また,毎度 目の敵にされる牛肉の飽和脂肪酸ですが,これも 『輸入牛肉 リブロース』の100gあたり34.4gから,『子牛肉 もも』の0.19gと 180倍もの開きがあります.ところが,食品交換表では肉であれば無条件に飽和脂肪酸が多いから避けろと記載しています.

以上見てきた通り,『ここのレストランのステーキは牛肉100gだから,ええとカロリーは…』と計算しようにも,実際にはレストランの奥の厨房に入り込んで,そこで使われている牛肉が,どこの国のどの部位かを確認しないとわかりません.

専門家の意見に従います

『あらゆる食品の栄養素は食品交換表により完全に把握できて,正確無比の栄養指導が可能である』という虚構の上に成り立っているこのナンセンスさから,データ栄養学の専門家である東大 佐々木敏 教授は『食事のカロリーの正確な把握など不可能』と述べています. したがって私も 食事ごとのカロリーの見積はしていません.

その代わり,毎日の食事がオーバーカロリーなのか,カロリー不足なのかは,前回の記事にあげた『体重の推移傾向』から判断しています. 直近の体重と28日移動平均体重とを比較して,体重が増えつつあるのならカロリーの摂りすぎだし,減る傾向ならばカロリー不足,何か月も体重が変わらないのであれば,食事と基礎代謝+活動量とがちょうど釣り合っているのだろうと判断しています. 実際,これが一番確実です.

前回の記事と併せてお答えすれば,『体重をコントロールするために,カロリー計算をする』のではなくて,『体重の変動推移をみて,カロリーを調節する』というわけです.食品交換表や教科書になんと書いてあろうと,体重がじわじわ増えていくのなら,それはカロリーの相対過剰以外ありえないのですから,自分のカロリー計算見積りの方が間違っているのです.

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