前回の記事『糖負荷試験のデータ分析結果』 で,日本人の糖負荷試験のパターンを分類すると,3つまたは4つの類型がありそうだと述べました.
米国人と比較すると
では,米国人のパターンと比較するとどうなるのでしょうか?
既に以前の記事 で,米国人の非肥満/肥満者の,健常人及び糖尿病の人の糖負荷試験データを得ていますので,そのパターンを同じように QUICK30 vs QUICKI 図にプロットしてみました.
米国人のデータは,肥満の人/非肥満の人で,耐糖能正常/軽度糖尿病/中程度の糖尿病 と,6種類あるのですが,この図のように,ほぼ同じ領域にあることがわかります.
ただし,ここで注意しなければならないのは,日本人のデータは個人の生データであり,米国人のデータは多くの人の平均だという相違点です. 米国人のデータは平均値なので,当然存在したであろう,個人間のバラツキはすべて消えているということです.
ただ その点を割り引いても,あらためて日本人と米国人の糖尿病の有り様がこれほど違うことに驚かされます. この図で 日本人の[分類1]の人は,たしかに米国人と同じようにインスリン抵抗性主体ですが,それ以外のほとんどの人はまるで違うのです.
Ahlqvist博士の言葉 を借りれば,
日本人で2型糖尿病と呼ばれているものは,実は相互にまったく異なる病気を,ひとまとめにしたものにすぎない
のだと思います.
そして博士が強調したように,
異なる病気を同じ治療法で済ませるのは乱暴だ
ということになります.
たしかに米国人 及び 日本人の[分類1]は,インスリン抵抗性のみを治療対象とすればいいでしょう. 肥満者であれば,現在 米国でそうなりつつあるように,SGLT2阻害薬が第一選択薬になるでしょう.
しかし,[分類2]や[分類3]ではどうでしょうか? この方々のインスリン感受性やグルコース感受性は,欧米研究者がみたこともないほど高いのです.よって,それが衰えていく過程で糖尿病が発症しているのではないでしょうか?
だとすれば,日本人に必要なものは,相撲取りのような米国人向けの薬ではなく,インスリン感受性/グルコース感受性を本来のレベルにまで戻すことのできる薬であると思います.
コメント
はじめまして、kazuでお願いします。
情報量が豊富かつ質が高いので、興味を引いたエントリから読み漁っています。
やはり注目は「2型糖尿病って本当にあるのでしょうか?」かと思い、自分の考えるところをコメントさせてください。
最初に、インスリン抵抗性とインスリン感受性の用語について、それぞれ大小良い悪いが逆で同じ意味で使われいるようです。
インスリン抵抗性が大=インスリン感受性が悪い(小)であり、インスリン抵抗性が小=インスリン抵抗性が良い(大)になります。
次に、血糖値に影響を与える要素として肥満によるインスリン抵抗性とインスリン分泌の過不足以外に、食事の糖質脂質バランスによるインスリン感受性と糖質の取り込み先の筋肉の量があります。
The Hawaii-Los Angeles-Hiroshima studyと別のエントリで記述されてましたが以下の内容のものでしょう。
http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/lifestyle2/lowcarbohydrate.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1655.html
高糖質食を食べていればインスリン感受性は良くなり、インスリン分泌量も少なくてすみます。
反対に高脂質食を食べていればインスリン感受性は悪くなり、大量のインスリン分泌を必要とします。
余談ですがしらねのぞるばさん勘違いされてますね、奥田昌子さんは正しいことを書かれてます。
https://sf-empower.com/zoruba-low-carbo-opposite/
筋肉の量についてはBMI25~30の日本人とアメリカ人の体格について書かれてましたが、BMIがいくつであろうと欧米人との比較では筋肉の量は劣るのではないですか。
日本人は瞬発系の筋力が重要なスポーツでは世界一になれませんが、持久系のマラソンでは一応金メダリストを出してますし。
以上がスウェーデン人での統計結果に違和感を感じる理由だと推測します。
kazu 様
何どもコメント投稿を試みられたようで 申し訳ありません.
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>BMI25~30の日本人とアメリカ人の体格について書かれてましたが、
>BMIがいくつであろうと欧米人との比較では筋肉の量は劣るのではないですか。
https://shiranenozorba.com/2019_04_23_ins-secretion-memo002/
の記事のことですね. 『BMI=25-30は日本ではいかにもぽっちゃりの人が多いが,米国人に代表されるコーカソイドでは筋肉の付き方が違う』と書きました. ですが, 『その他のBMIでは 日本人と米国人とは同じだ』と書いたつもりはありません.そう読めましたでしょうか?
>インスリン抵抗性が大=インスリン感受性が悪い(小)であり
私はインスリン感受性とインスリン抵抗性とをダイレクトな反語としてはできるだけ使わないようにしております.
またグルコース感受性とインスリン感受性とを混同しないようにしているつもりです.血糖値は GLUT4経路だけで決まるわけではないからです.
>高糖質食を食べていればインスリン感受性は良くなり、インスリン分泌量も少なくてすみます。
>
>奥田昌子さんは正しいことを書かれてます。
申し訳ありません. 何をおっしゃっているのかまったく理解できません.
糖質を食べれば食べるほど インスリン感受性またはグルコース感受性が高まり,どんどんインスリン分泌量は減っていく,ということでしょうか?つまり毎日 糖負荷試験を行っていればどんどん耐糖能がよくなっていくはずだ,ということでしょうか?
奥田先生は,基本的なところで何か勘違いされていると思います.先生の著書のブルーバックス『欧米人とはこんなに違った~日本人の体質~』p.70には
『( 日本人は)インスリンが少なくても,炭水化物の摂取が多ければブドウ糖を必要なだけ細胞に取り込むことができました.しかし炭水化物の摂取が減ると少ないインスリンではブドウ糖を十分確保できません.膵臓はインスリンの分泌を高めようと頑張りますが,次第に疲れて機能が低下します.』
とありますが,これは因果が逆転していると思います.つまり,血糖上昇がインスリン分泌増加のトリガーになるという,現代医学の通説をまったく否定しているのです.通説だから正しいとは言うつもりではなくて,『炭水化物の摂取が減ると少ないインスリンではブドウ糖を十分確保できません』がまったく異次元ワールドです. kazu様は これをどう理解されますか?
古来の日本人はインスリン感受性・グルコース感受性がいやおうなしに高まるようなライススタイルだったから,高糖質食でも特に支障はなかったのです.
奥田先生の言われる『高糖質食を続けていたから インスリン感受性が高まった』は,それを逆立ちさせて考えた間違いだと思います.
これらの記事にも書いた通り
https://shiranenozorba.com/2019_06_16_thin-japanese-1/
https://shiranenozorba.com/2019_06_18_thin-japanese-2/
https://shiranenozorba.com/2019_06_20_thin-japanese-3/
毎日 よく体を動かしていて,一日の終わりには 肝臓や筋肉のグリコーゲンは完全に使い果たしてカラッポになっている,そういう状態であったと思われる 戦前までの日本人庶民は,きわめてインスリン分泌が少量で済んでいた(というか ほとんどインスリンの追加分泌は必要なかった)のだろうと思っています.
> http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/
山梨医科大学の 故佐藤章夫名誉教授のHPですね.
故人の悪口は言いたくありませんが,ここに記載されていることは私からみるとカルトそのものです.
したがって回答は控えます.
なお,奥田先生も佐藤先生も,ご自身では 糖尿病患者を本当に治療された経験がなさそうだという共通点があります.