ようやく この文献の報告主旨にたどりつきました.
スウエーデンのAhlqvist博士は,「2型糖尿病と診断されている人は,実は相互に病態の異なるグループに分類できる」と2018年に英国医学誌 Lancetに発表しました. この方法を改良して,6つの指標(発症時の,年齢・BMI・HbA1c・C-ペプチド・HDL・中性脂肪)で,英国人 6,145人,オランダ人3.054人の「2型糖尿病」の人を,データ駆動型クラスター解析 (Data-driven Cluster Analysis) してみたところ,5つのサブグループに分かれることが見出されました.これはAhlqvist博士の得た結果とほぼ同じでしたが,新たに 特異的にHDLが高く,かつ中性脂肪が低い 第5のグループ=MDH(Mild Diabetes with High-HDL;高HD 軽度糖尿病)が存在することを見出しました.
これら 5グループの人達が,実際にはどのような 糖尿病治療を受けて,その結果がどう変化していったのか(Trajectories)を追跡した,これが冒頭の文献の報告主旨です.
まず英国での追跡結果です.
英国 スコットランドの糖尿病患者データベース GoDARTSに登録された 2型糖尿病患者で,登録後15年間追跡可能であった人が,その後どのように治療(投薬)が変化していったのかを図示しています.
治療の内容は,下表のように大まかにコード化されています.
縦軸は 治療法の割合,横軸は経過期間(0年 → 15年)です.
薄い水色は投薬なし,そしてやや濃い水色は,CVD(心血管疾患)[★]の投薬のみなので,糖尿病の薬は投薬されていない人です.
[★]= 強心剤,降圧薬,利尿薬,スタチンなど
一方肌色又はそれより濃い色は 糖尿病の投薬です.色が濃くなるほど投薬が強化されています.
一見して明らかなのは,SIDD[左上]の人は,初期から積極的な投薬開始され,しかも時間経過と共にどんどん強化されていったことがわかります. これは主治医が,HbA1cの悪化をなんとかくい止めようとしたのでしょう.
次に投薬強化が目立つのは(意外にも) SIDDの下のMODの人です.『MOD = 肥満性 軽度(Mild)糖尿病』という名前に反して,この人たちは発症後数年以降 どんどん投薬が強化され,15年目時点では SIDDの人と ほぼ同じになっています.
その他のグループを見ると,MDと MDHは,軽症(Mild)の名前の通り,他のグループよりは 緩やかな糖尿病進行です.逆に SIRDは 『インスリン抵抗性 重度糖尿病』と「重度(Severe)」がついている割には,この図だけを見ると,MDやMDHの人と あまり見分けがつきません. これが曲者なのです.
以上は 英国のデータベースでしたが,同様にオランダのデータベースを見ると;
ほぼ英国の結果とそっくりなことがわかります. どちらの結果でも,MDHの人は もっとも進行が緩やかであり,
MDHは インスリン分泌は低いのに,糖尿病進行はもっとも遅い
と,著者が述べているのはこのデータを指しています.
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