第64回日本糖尿病学会 ~注目の講演

次回の学会は,どうも 全面WEB開催となる可能性大です.

通常 日本糖尿病学会は 3日間にわたり開催されます. ただしそのうち1日目の午後の前半は,全体講演・学会総会だけが行われ,それ以外の講演や一般発表は行われません. つまり学会参加者は,全員それを聴けというわけです.そういうわけなので,3日間の午前午後,フルにあちこちの会場を飛び回っても,参加できるシンポジウムは最大でも7,8本程度です.会場がタコ足の場合には もっと少なくなります.しかもその合間を縫って,どうしても聴いてみたい一般発表・症例報告があり,ポスター発表も覗きたいです. なので,学会期間中は 毎晩 ホテルで『ええと,明日の朝は まずB会場でシンポジウムをここまで聞いて,それからF会場の一般講演を2本聴いて,タクシーに飛び乗ってA会場に戻り このシンポジウム..』などと 詳細な移動プランをたてています.

それがWEB開催となれば,興味があるもの/ないもの 一切無制限でアクセスできるのですから,こんな楽な学会参加はありません.ひと風呂浴びて 一杯やりながら聴ける学会講演はオツなものです.

そこで独断と偏見で,次回学会のプログラムから 注目すべき 講演・シンポジウムを選んでみました.

特別講演1 C.Ronald Kahn先生

何といっても,これが目玉です. 肥満とインスリン抵抗性との関係が糖尿病に至るPathwayであることを示した,ジョスリン糖尿病センターの大御所です.本ブログでも Kahnの双曲線を紹介しました.

ただWEB開催となれば,博士は来日せずに 米国からのビデオ講演となるでしょう.

Kahn博士の功績は偉大なのですが,日本人糖尿病患者の目から見ると 「糖尿病」=「インスリン抵抗性」=「肥満」であって,それ以外ありえないというという単線路線を固定してしまったうらみがあります.博士が 「インスリン欠乏型糖尿病」をどう考えているのか,講演で言及するかどうかを注目したいと思います.

会長講演 日々の診療での気付きから新しい糖尿病学を切り拓く

患者側の視点ではなく,医師の目から 何を考え,何を『気づいて』いるのかは,ぜひ聞いてみたいところですね.

特別講演2 門脇孝先生

前学会理事長の門脇先生の講演です. 昨年10月の講演では,もともと5月に予定されていた学会での『理事長退任記念講演』という性格が強かったので,学会のこれまでの歩みのレビューが大半でした. しかし,今回講演は 理事長という責務からは解放されて,大所高所からの『どうあるべきか』の御考えを述べていただけると期待しています.

公募企画2 改定された食事療法ガイドラインの実践における課題

糖尿病診療ガイドライン 2019』や『糖尿病治療ガイド 2020-2021』で,

糖尿病患者の食事療法に一律はありえない.個別化されるべきである

という原則を打ち出したものの,では具体的にどうすればいいのか,その指針までは打ち出されていません.
これでは『みんな明るく元気に過ごしましょう』というスローガンだけを放り出されたようなものです. 実際 今 日本全国の管理栄養士は困っているのではないでしょうか. 公募企画の募集要項にはこう書いてありました.

  • 「改定された食事療法ガイドラインの実践における課題」
    • 2019年9月に、糖尿病診療ガイドラインが改定されました。特に食事療法が大きく改定されております。年次学術集会が開催される時点では、約1年半が経過します。このガイドラインに基づいて指導を行う上で出てきた課題とできればその解決の方向性についてご発表をお願いいたします。また、新しく見えてきた課題についてもご発表ください。
    • メタボ対策から高齢者サルコペニア対策への転換をどのようなタイミングで行っているかも含めた発表を期待します。
    • 運動療法の工夫も含めた食事療法の提案を歓迎します。

『課題と できればその解決の方向性』というところに 募集する側の苦悩がにじみ出ています.『このように解決したという事例を発表願います』などとやったら 応募者ゼロになるでしょう.患者ごとに食事療法を個別化するといっても,それは無制限に患者に迎合することではないし,もちろん 従来のように食品交換表を一律に押し付けることではない. どのような発表が出てくるのか楽しみです.


ここまでが しらねのぞるばが勝手に決めつけた『注目講演』です.講演を聴く前に,あらかじめ 確かめたいポイントをリストアップしておくのが私のやり方です.

シンポジウムにも注目すべきものが多いので次回に.

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