ここまでの議論で;
SGLT2阻害薬だけでは体重低下はいずれ『底打ち』する
ということが明らかになりました.
しかし,SGLT2阻害薬の実際の臨床では,一部の臨床報告例において,体重が『底打ち』どころか,平均的には それ以降徐々にリバウンドしていく傾向が見られました.
この結果を,前回記事 の理論計算値と比較すると;
たしかに SGLT2阻害薬 服用直後の3ヶ月までは 理論通りに体重低下しているのですが,その後は徐々にリバウンドしています.
なぜリバウンドするのか
これも学会での報告例を見ていきますと,全員ではないものの,SGLT2阻害薬服用を開始すると一部の人では,
猛烈な空腹感に襲われる
という現象がみられるようです.その結果,つい間食,それも甘いものに手を出して,結局一定の摂取カロリーを守るどころか,かえってカロリーが増えてしまい.SGLT2阻害薬のブドウ糖排泄効果を帳消しにしてしまうようです.
実際,『SGLT2阻害薬の減量効果は,代償性過食(Compensatory hyperphagia)によってかなり減殺されてしまう』とも報告されています.
下記は糖尿病学会で実際に報告された症例です[第60回 年次学術集会 1-P-104]
かえって体重が増えてしまった人すらいます.こういうケースも集計に含まれますから,全体平均としては 1年後でややリバウンドという結果になってしまったのですね.
SGLT2阻害薬を服用すれば,たしかに毎日 血糖を放出してくれます.血糖値低下効果だけを見れば,おおむね7割以上の人に顕著な効果があるようです.しかし体重減量の観点からみると,
- 体重が減少すると,消費エネルギーも低下するので,一定のペースで体重低下を継続させようとするなら,低下した体重に相応して摂取カロリーもさらに減らさなければない.
- 全員ではないものの,SGLT2阻害薬服用で強い空腹感におそわれる場合がある.
(1)と(2)を両立させるのは相当困難でしょう.強い意志を持ち続けられる場合は,両立させられるかもしれませんが,そもそもそういう意志の強い人であれば,薬に頼らなくてもも減量ができたはず.
『SGLT2阻害薬は苦労せずに痩せられる薬』ではない
という結論でした.
【完】
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