3月5日~15日は,[第55回糖尿病学の進歩]の聴講に専念しております.
この講演会は,日本糖尿病学会が,主として専門医向けに最新の医学情報を提供するものです.
講演内容をそのままネットに転載するのは厳禁です.よって,ブログでは 講演を聴講した感想のみを記載いたします.
昨日までは,Live配信Onlyの『共催セミナー』だけを聴講しておりました.聞けるチャンスは1回だけだからです.
『共催セミナー』とは スポンサー(=製薬会社など)と学会とが共同で開催する講演です. したがって(すべてではありませんが) 当然講演内容には,スポンサーの製品を宣伝するような内容も含まれます. つまり『スポンサーであるX社の製品で,こういうすばらしい臨床試験の結果が出ました』などという具合です. ただし,宣伝臭ふんぷんというわけでもなく,そこは学会ですから,講演者は冷静に批評することがほとんどです.
ところで聴講した共催セミナーの中で印象に残る言葉がありました.
治療目標
昨年 日本糖尿病学会が,一般医向けに発行した小冊子『糖尿病治療ガイド 2020-2021』には,『糖尿病の治療目標』として,こういう図が掲載されています.この図は,今回の講演会でも何度も目にしました.
この図の言わんとするところは,『糖尿病治療とは 単に血糖値やHbA1cを正常域に下がればそれで治療達成ではない. 患者が正常健常者と変わらない社会生活を送り,平均寿命を達成することが,真の治療目標である』ということです.この図自体は 以前の版から掲載されていました.ただ今回の版では右下のこの箇所が付け加えられています(★).
(★)左側の『高齢者のサルコペニア』も今回から付加されたものです.
これでは何のことだかわからないですね.
学会声明
日本糖尿病学会は2019年11月14日に,こういう新聞広告を出しています.
糖尿病というだけで,社会からいわれなき偏見に基づく差別(=Stigma)を受けないよう,学会としても支援(=Advocacy)を行っていくというものです.
このこと自体は大変結構なことです.
講演会では
今回の『第55回 糖尿病学の進歩』講演では,上記の支援活動の説明に関連して,こういう意見が紹介されておりました.
そもそも[生活習慣病]という言葉が,偏見を助長しているのではないか. 名称の変更も検討すべき.
糖尿病・高脂血症・高血圧を『生活習慣病』という言葉でひっくるめているのは,世界的にも 日本とごく少数の国だけのようです. 英語ではLifeStyleですが,それを『生活習慣』と訳したために,別の意味合い,つまり侮蔑や非難のトーンを付け加えてしまいました.
『だらしない』『怠惰な』生活習慣で糖尿病が発症したのだから,糖尿病患者は自業自得なのだという人は後を絶ちません. この言葉に対しては,特に1型糖尿病の人ははらわたが煮えくり返るでしょう.
ところが心無い人がそう言うのならまだしも,あろうことか,過去の 学会の幹部の言葉にはこういうのがありました(さすがに最近は言わなくなりましたが).
2型糖尿病は60~70代が最も多く,悪しき生活習慣によって惹起された症例が殆どである
2013年 日本病態栄養学会 MeetExpert3-1
これでは,国民すべてが 糖尿病=怠け者と思ってしまうのは当然でしょう.
学会は責任をとって,ぜひ名称の変更にとりくんでいただきたいと感じました.
[感想-1]
コメント
このツイートを貼れと言われた気がしました…
https://twitter.com/OdaQ_DM/status/1300309322392457216
自らも糖尿病,しかもMODYのドクターがおられるのですね.
言われてみて気づいたのですが,MODYの場合は β細胞は健全なので グリニド剤や GLP-1Rが使えるのですね.1型同様 インスリンしか選択肢がないと思っていました.
いずれにせよ遺伝子異常による糖尿病なのですから,『こんなに若いのに糖尿病になるのは生活習慣が悪い』と言われるのは 本当に腹がたつでしょうね.