登場間近[1]

もうすぐ糖尿病のGLP-1受容体作動薬(以下 GLP-1RA)の新薬が登場します.

GLP-1受容体作動薬とは

GLP-1受容体作動薬とは,食後に小腸下部のL細胞から分泌される消化管ホルモン=インクレチンの一種で,膵臓に働きかけてインスリン分泌を促進します.

インクレチンの分泌

膵臓のβ細胞表面には,このGLP-1を受け取る担当係員が待機しています. それがGLP-1受容体 GLP-1 receptor です.

GLP-1受容体(一部)

にわかには信じがたいですが,この複雑な立体構造は,たった1本のアミノ酸鎖で作られています.そのアミノ酸鎖の一方の端(N末端)から細胞膜の外にヒョロヒョロと飛び出しているのが GLP-1を捕まえるポケット(青)で,ECD(extracellular domain; 細胞外ドメイン)と呼ばれています.そして鎖の反対の端がC末端(赤)で,こちらはGLP-1がポケットに到着したことを 細胞内に知らせる役目です.

このポケットに GLP-1が捕捉されるとこうなります.

Cong 2021 Fig.1-b

GLP-1受容体のECD(赤)に,らせん状のGLP-1(緑)が絡めとられています. この時GLP-1受容体のECD自身も立体構造が少し変化し,さらにその形状変化が受容体全体に及んで(=allosteric効果),GLP-1受容体に接続しているG蛋白(黄色・水色・青色;最初の図では省略していました)を介して β細胞内に「只今 GLP-1が到着しました!」と伝わり,大わらわでインスリン増産が始まります.

したがってインスリン分泌を促進したいのなら,自前のGLP-1に追加して 同じ構造を持つGLP-1を外部から注射してやってもいいのですが,実際のGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は,GLP-1とは少し違う構造のものが使われます.

GLP-1受容体作動薬のアミノ酸配列

天然のGLP-1[最上段]に最も構造が近いのは,2段目のリラグルチド(商品名:ビクトーザ)です. たった1か所だけアミノ酸配列が異なるだけです. しかし その他の GLP-1RAは,アミノ酸配列がかなり違っていたり,置換基が付いたりしていますが,要はGLP-1受容体をうまく「騙して」所定の位置にもぐりこめれば それでいいのです.

しかし これらがなぜ天然のGLP-1と同じ構造にしていないのか?

主な理由は,天然のGLP-1は DPP-4によって速やかに(半減期~数分)分解されてしまうのに対して,これらの「GLP-1もどき」は,DPP-4の歯が立たないので 長時間(半減期=1日~1週間)人体内にとどまり続けられるからです.

服用は面倒

GLP-1RAは,一日又は1週間に1回の投与で 血糖値を下げてくれる優れものですが,最大の欠点は注射薬であることです. 最近では「リベルサス」(ノボ ノルディスク ファーマ)のように,本来注射薬のセマグルチドを経口服用できるようにしたものもありますが,「起床後空腹状態で少量の水と共に服用. 服用後30分は飲食禁止」などと面倒です.

以上の通り,GLP-1受容体作動薬は,効果は優れているものの面倒な薬だったので,「普通の薬のようにのめるものはできないのか」と長らく期待されていました.

そして それが間もなく登場します.

[続く]

  

  

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