メトホルミンで老化防止?

ぞるばは 子供の頃,よく 縁側に座って タクアンを齧りながら渋茶を飲んでいたそうです.
『爺さんみたいな子供』 (祖母 談)だったのですね. 老化は すでに その時から始まっていたようです.

(C) すんたらず さん

ところで メトホルミンは老化を遅らせて寿命を延長させる効果があるのではないか,と期待されています.それはどういう仕組みなのでしょうか.

老化とは

一般に老化現象とは,細胞の新陳代謝が衰え,臓器の機能が低下していくことととらえられています. では どういうメカニズムで そのような老化現象が細胞内で起こっているのでしょうか.

老化のメカニズムはいくつもあります.

たとえばこの記事で 紹介したように;

細胞の遺伝情報を保持している染色体は,次第に端から擦り切れていくため,ある程度以上分裂をくり返した細胞は,もはや新陳代謝能を失って寿命が尽きてしまいます.

また別の老化メカニズムには NF-κBという転写因子がかかわっています(κはギリシャ文字のカッパです).

転写因子とは

世の中には自らDNAを修復したと称する不思議な人もいるようですが,人体のDNAは生まれてから死ぬまで一生代わりません. つまり年齢を重ねたからといって,その人のDNAが変化していくわけではないのです.しかしDNAは変わらないのに,日々体内で作られる細胞は老化していきます.それはDNAの情報をRNAにコピーする転写因子(Transcription Factor:TF)が関係しています.

DNAにはすべての遺伝情報が書かれていますが,それらの遺伝情報のすべてが常に使われているわけではありません. 中には必要が生じたら 呼び出されるという,いわば「非常勤」のものもあります. 必要に応じてDNAの情報を呼び出したり,あるいは逆に抑制したりする,この制御を行っているのが 転写因子です.

NF-κB転写因子は,細胞が酸化や炎症などのストレスを浴びると 俄然ムクリと起き上がって,細胞のDNAに『えらいこっちゃ! 炎症が起こっとるで!』と通知して(大阪弁は使っていないでしょうが),インターロイキン-1,-2,-6などといった「炎症性サイトカイン」を合成する遺伝子を活性化させます. そして大量生産されたこれらのサイトカインが,発熱・腫れあがりなどといった炎症反応を引き起こします. なんだかボヤを煽って大火事にしているようにみえますが,炎症性サイトカインは,人体の免疫反応を即座に発動させるために,わざと大騒ぎしているのです.

このことからわかるように,本来 NF-κBは,人体の防御システムの一部です. これがなかったら 感染や大怪我をしても免疫反応が始まりませんから.

しかしながら,NF-κBが『非常勤』専門であることからもわかるように,NF-κBが 常時ガンガン暴れまくると,かえって人体に有害です. たとえばガン細胞には大量のNF-κBがみられ,癌細胞の増殖促進因子になっています.

また老化により,体内が常に酸化ストレスに晒されていると,つまりは常に大量のNF-κBが存在するようになり,過剰な炎症反応を起こします. そしてそれらの炎症反応が,またNF-κBをさらに活性化し…と これでは悪循環です.

ところが,この文献報告によると,メトホルミンはNF-κBの老化促進作用を抑制できるのではないかとしています;

Kanigur 2019
Kanigur 2019 Fig.3を翻訳

皮膚の老化細胞から生ずる ROS(活性酸素種)により,NF‐κBが勢いづくと,アポトーシスが亢進し,コラーゲンの分解が抑制され,結果としてこれらすべてが皮膚の老化を促進する方向に働いてしまうのですが,メトホルミンは このNF-κBの活性を鎮めて,皮膚のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)を促進し 老化速度を緩やかにする作用があるという説です.

これが本当なら,コラーゲンを飲んだり塗ったりするよりも,メトホルミンを飲んだ方が お肌プリプリには有効だということになりますね.

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