第66回日本糖尿病学会の感想[11] 電磁波が染み込んでくる

【この記事は 第66回 日本糖尿病学会年次学術集会を聴講した しらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】

血糖値測定器に関する学会発表です. といっても,これはまだ開発中のものです.

2-99-5 糖尿病予備群を対象とした上腕装着型非侵襲グルコースセンサの臨床評価

リブレにせよ,SMBGにせよ,体にブスッと針を突き立てる方式です. 医学では,これを『侵襲性の』検査と呼びます. 体になにがしかの傷をつけるからですね.

そこで,まったく体を傷つけない『非侵襲性』の方法があれば,それに越したことはありません. 『当てるだけで』つまり接触させるだけで血糖値がわかる測定器は,世界各国で開発が進められています.

この報告は NTT物性化学基礎研究所からのものでした. 『電話会社が血糖値測定器?』と奇異に思えますが,現在の電話回線は,昔のように電話線ばかりではなく,大容量の幹線にはほとんどマイクロ波回線が使われています.

(C) おっきーGTO さん

この血糖値計は,腕につけたマイクロ波発信機からの反射信号の強弱で血糖値を推測するものです.

測定原理は,マイクロ波が当該個所に浸透すると,誘電率の高いものが多いほど反射波は弱くなります.もちろん人体の大部分は水でありこれは大きな誘電率(~80)を持っています.水分の多いものを電子レンジに入れるとよく加熱される理由です.

そして,そこに溶け込んでいるブドウ糖の濃度が変わると,ごくわずかに誘電率が変化します. この変化量でもってブドウ糖濃度(~血糖値)を推測する仕組みです.

ところで接触型の血糖値測定器は,ほかの方式も研究されています. それらは 光を当てて,その反射光のスペクトル変化を見るもの,紫外線を当てて発生する蛍光を観測するもの,赤外線を当てて その発熱量から推測するものなどです.

その中でもNTTがこのマイクロ波方式に注目するのは,マイクロ波は光や赤外線より波長が長いので,皮膚表面から深いところまで浸透するからです.これは電子レンジで加熱すると中心部から熱くなることでもわかりますね.

測定精度は

リブレの測定精度は皆様ご存じの通りです.SMBGでさえ,誤差はあるのですから直接血液のブドウ糖濃度を測定していないリブレは,まああんなものでしょう.

ここで,血液と,リブレが測定対象としている 間質液などのブドウ糖濃度とを比較すると,こうなっているようです.

Sensors 2020 Fig.1を翻訳

 

血糖値が高いほど,リブレの測定誤差が大きくなる理由が頷けます.

そしてマイクロ波測定器では,これを外部から『隔靴掻痒』で推定するのですから,更に困難になります.

口演では,このマイクロ波方式の血糖値計とリブレとを同時に腕に装着して,糖負荷試験を行った結果が報告されていました.

この図は,発表のスライドを手書きスケッチしたものなので正確ではありません

傾向だけは何となくあっているかな,という感じです.

また リブレよりも応答が遅れたり,体を動かすと数字がピョンと飛んだりします.測定誤差も MARDで言えば29%だそうです.リブレやDEXCOM 6GのMARDが10%ほどですから,まだまだ実用化までには距離はありそうです.

機器の大きさは

現時点では握りこぶしSizeです. しかし 電子機器の常として,方式が固まれば小型化自体はそれほど困難ではないでしょう.

電磁波が染み込んでくる

ところで,この測定器は,原理上 マイクロ波という電磁波を体の中に染み込ませるわけです.染み込む深さは数mmだそうです.

宇宙波動は健康にいいが,電磁波は有害だーー

この方式が実用化されたら,こういう香ばしい方々はどういう反応をするのでしょうね.

(C) msmaririn さん

[続く]

コメント