第65回日本糖尿病学会の感想[3] 内臓脂肪量をピピッと測定

【この記事は 第65回日本糖尿病学会 年次学術集会に参加したしらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞き間違い/見間違いによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】

内臓脂肪計

神戸で開催していた 第65回日本糖尿病学会で,協賛メーカーの展示ブースを見ていたら 面白いものを見つけました.

腹に プロレスのチャンピオンベルトのような ごっついベルトを巻いて,腹部断面のインピーダンス測定から内臓脂肪面積を推測する装置です.

測定原理は,この文献で発表された方法で,腹部の生体インピーダンス(BIA; Bioelectrical Impedance Analysis)による測定です.

InBodyなどの業務用体組成計でも,生体インピーダンスから人体各部の内臓脂肪量を推定しますが,あれは両手・両足の4点電極で測定しているのに対して,この装置はへそ回りに局限しての測定ですから,InBodyよりは精度は高いと思われます.

測定原理

測定の具体的な原理は下図の通りです.

腹囲は同じだが,ただ内臓脂肪の量が異なる二人の被験者で,腹部正面から背中に対して一定の微弱電流を流します.この時 腹側部で観測される電圧(V1’,V2′)は,内臓脂肪の少ない人(左)よりも 内臓脂肪の多い人の方が高くなります.内臓脂肪は電気抵抗が大きいので,内臓脂肪を貫通するのに 高い電圧が必要になるからです.一方皮下脂肪が多くても,背中から腹への電気力線は,皮下脂肪を相対的に貫通していないので 腹側部電圧への寄与は小さくなります.

更に,腹囲は異なるが,内臓脂肪断面積/全断面積 比率が同じ場合はこうなります.

腹側部で観測される電圧は,腹部の全断面積に対する内臓脂肪の割合で決まることになります.

以上のことから,腹部の断面積と腹側部の電圧を知れば,内臓脂肪だけの断面積がわかることになります. 実際 この方法で測定した 腹部の内臓脂肪面積(横軸)と,CTから実測した内臓脂肪面積(縦軸)とはよい相関( r= 0.88)を示しました.

なかなか素敵な測定器です. 何よりCTではないので,放射線被ばくの問題がありません.これなら毎日測っても無害です.

なので,その場で買って持ち帰ろうかと思ったほどですが,お値段 なんと

980,000円 !!

うーん,もう一桁安ければ買うのですけどね.

内臓脂肪を 本当に実測しようと思ったらCTによる精密測定と専用の解析ソフトウエアが必要ですから,町のクリニックでは不可能です. しかし,この装置なら手が届くでしょう.

通院している方は,ぜひ主治医におねだりしてみてください.
5年リースなら 数万円/月程度でしょうから.

[続く]

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