[第55回糖尿病学の進歩]感想記事(7) 運動療法関係

糖尿病治療では,食事療法と運動療法とは『車の両輪』であり,どちらが欠けてもいけないとされています.
今回の講演会で 運動療法をテーマとした講演が 下の通り 7本ありました

おおむね 診療ガイドラインや治療ガイドに書かれている一般論,つまり

糖尿病患者に運動療法は必要であり,特に有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせるのが最適である

という内容でした.

とはいうものの

しかしながら,この記事にも書きましたように;

薬や注射については,患者はほぼ医師の指示を守りますが,食事療法や運動療法の遵守率は極めて低いのです.
今回の講演会でも,患者の『運動療法が実行できない言い訳』の例として;

  • 時間がない
    気候がよくない(夏は『暑すぎる』冬は『寒すぎる』)
    膝が痛い
    着替えが面倒
    靴が足に合わない

などと,実にバラエティ豊かでしたw

とは言え,患者に『運動をしないと血糖コントロールが悪化しますよ』と言っても,ほとんど効果がないので,いっそ

『運動しないと 糖尿病が悪化してガンになりますよ

これはよく効くのだそうです.たしかに患者からすれば,リブレやSMBGでも使っていない限り『血糖コントロール』が目に見えるわけではないので,わかりやすく『ガンになる』で脅かした方が手っ取り早いのでしょう.

なお高齢者の運動能力低下は,まず握力の低下に現れ,次いで歩行速度の低下→膝伸展筋力の低下と進むようです.また血糖コントロールにもっとも影響する筋肉は,やはり下肢の筋肉です.そして鍛えやすいのもまた下肢,つまり足の筋肉です.

画一的はダメ

また,当然ですが,薬物療法・食事療法と同様に,医師は画一的な運動療法を求めているのではなく,体力・メディカルチェック結果に応じて『一人ひとりに個別化された運動療法』が当然であるというスタンスです.運動の種類・負荷強度・時間・時刻等々,それぞれに応じて,服の仕立てのようにメニューを組むべきという考えです.

『自分は この運動法で 糖尿病を克服した』,それは結構なことです.努力に敬意を表します.
しかし,『だから この方法しかない.そうしないと治らない』,これは大きなお世話でしょう.

また,今回の講演ではまったく触れられていませんでしたが,生来の運動好きの人はいいとして,私のように,『山登りは好きだが,スポーツジムなど真っ平ごめん』つまり『運動のための運動は楽しいとは思わない』人はどうすればいいのでしょうか.その答えを,今回のどの講演も示していないと感じました.

[感想-7]

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    >運動のための運動は楽しいとは思わない

    私もここに分類される人種ですね。
    一日中、スクワットをしているようなスキーは楽しいですが、スクワットを毎日100回やれとか絶対無理です。
    私の場合は、スキーとかサイクリングとか何らかの道具を使うスポーツが好きなのです。
    ただ、走るだけのジョギングは続けられません。道具らしい道具はシューズだけですからw

    唯一、海辺で育ったので水泳だけは得意です。しかし、毎日プールに行くわけにもいかず、あまり気軽にはできませんね。
    平日は通勤で8000歩ほど歩くので、それだけでも少しは運動になっていますが、年末には毎日が日曜日の生活が待っています。
    さて、どうやって体を(楽しく)動かそうか悩みどころです。まぁ、ジョギングは嫌いでも景色を見ながらの散歩は好きですから、とりあえずウォーキングですかね。

    • しらねのぞるば より:

      >唯一、海辺で育ったので水泳だけは

      私も水泳は好きでした. 中学生の頃は,毎日 海で遠泳をしていました. しかし,プールの水泳はあじけないのでやりません.

      >年末には毎日が日曜日の生活

      私は 退職の1年以上前から『会社離れ』の準備をしてました. また 毎日が日曜日になった直後は,国会図書館にせっせと『通勤』しておりました. あそこは1日中いても快適でお得な空間です.

  2. かかか より:

    食事療法や運動療法を半永久的に毎日続ける事で、耐糖能が正常に向かい、いずれ解放されるなら頑張れると思います。維持が精一杯かなと思います。

    • しらねのぞるば より:

      食生活に気を付けて,そしてこまめに体を動かして,血糖値の変動と上限とを管理する.

      長期間 無理なく続けられるのはこれくらいでしょう. そしてそれで十分なのではないでしょうか.