『2型糖尿病』は存在しない[21] 日本人の解析結果-3

【転帰】とは

転帰」とは病状の変化全般を指す言葉です. 「病状の変化」なので,治癒に向かって良くなることも,病気が悪化することも,変化があればすべて転帰です.

※ 余談ですが,「転帰」はいつから医学用語として使われるようになったのでしょうか? いろいろ調べているのですが,どうもはっきりしません. 転帰とは「転じて帰す」,つまり状態が変化して[転],別の状態になり そこで落ち着いた[帰]のですから,意味はそれで正しいのですが,語源・出典が不明です.

4つの『2型糖尿病』の転帰

日本の糖尿病患者においても,Ahlqvist分類は有効であり,『2型糖尿病』と呼ばれていたものは,実は4つの異なる病気パターンでした.

Factors Associated with Risk of Diabetic Complications in Novel Cluster-Based Diabetes Subgroups: A Japanese Retrospective Cohort Study

特に懸念されるのは SIRDの『異質』な特徴です.

血糖値,HbA1cは,MODMARDと変わらないのに

Factors Associated with Risk of Diabetic Complications in Novel Cluster-Based Diabetes Subgroups: A Japanese Retrospective Cohort Study

HOMA指標を見ると, SIRDだけが,とびぬけたインスリン抵抗性とインスリン分泌力を示していました.

Factors Associated with Risk of Diabetic Complications in Novel Cluster-Based Diabetes Subgroups: A Japanese Retrospective Cohort Study

しかし,インスリン抵抗性と,それに対抗して多量のインスリンを分泌する,この 危険な力比べはいつまでも続きません. 各グループの糖尿病性腎症(DKD)の転帰を見るとこうでした.

Factors Associated with Risk of Diabetic Complications in Novel Cluster-Based Diabetes Subgroups: A Japanese Retrospective Cohort Study

スウエーデンでもドイツでもそうであったように,日本でもやはり4つのパターンそれぞれに転帰は違っていました.特に SIRDの糖尿病性腎症(DKD)の累積発症率は,他のグループよりも群を抜いて速く進行していました.


日本人の『2型糖尿病』もやはり4つの異なる病気に分かれるようです.もちろん この報告 は,大規模なものでもないし,海外の糖尿病データベースほどの精度もありません. それは今 日本でようやく始まった,医療機関での糖尿病患者のデータをリアルタイムに集積していく J-DREAMS の結果が出揃えば,いつかは結論が出せるでしょう.

しかし,今この瞬間にも,現在のガイドラインではMODSIRDも『肥満による糖尿病』と ひっくるめて考えられていて,このようなリスクの違いがあるとは,本人はもちろん 主治医も意識していないでしょう.

このままでいいのでしょうか?

[22]に続く

コメント

  1. apple より:

    こんにちは
    appleです

    またテーマと異なる質問ですみません。

    先日のセンサーの件の続きです

    新しいものに変えたのですが
    数値が変わらないので
    新しい測定器を購入しました。

    ぞるばさんと同じものです

    これの電源はCR2032のボタン電池だと思うのですが
    交換は側面の硬いところを頑張って開ければ出来るのでしょうか?

    それとも付属のケーブルを使って
    パソコンに繋ぎ充電するのでしょうか?

    説明書を読んだのですが
    よくわからなかったので
    教えてくださると助かります
    宜しくお願いします

    因みに2つの機器の測定値差は
    24ありました。

    やはり低血糖ではないことがわかりました。

    • しらねのぞるば より:

      >交換は側面の硬いところを頑張って開ければ

      はい,妙に硬いので 『本当にこれか?』と少し不安になりますが,くぼみに爪をたてて 真横に引き抜けばいいです.
      CR2032は2個必要です.
      側面のUSBコネクタは,PCへのデータ送付用で,充電機能はありません.

      >2つの機器の測定値差は24

      結構ありますね.私はこの機種は3台持ってますが(センサーを200枚注文すると,必ず1台ついてくるので),だいたい10~20のバラツキで収まっています.

  2. highbloodglucose より:

    この分類は興味深くて、自分はどこに分類されるんだろう?と知りたいですが、しかしながら、実際の臨床にはどのように役立てることができるのでしょう。

    たとえば、SIRDはインスリン抵抗性が異常に高く、腎症を発症しやすいということが分かったとして、では、ほかのクラスターと違う治療法があるのでしょうか。

    SIRDならば、腎臓保護作用が報告されているSGLT2阻害薬を第1選択薬とする?
    腎症の予防として、血圧対策の強化?
    腎臓保護作用が新たに報告された、ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬を選択するとか?

    SIDDなら、どういう治療方針になるのでしょう。
    インスリン分泌低下型ということは、やはりインスリン注射を視野に入れるということになるのでしょうか。
    網膜症のリスクが高いとなると、眼科に定期的に通うこと以外に、なにができるのでしょう。

    MODは、やはり痩せることが第一でしょうか。
    MARDは…加齢が原因なら、どうすればいいのでしょう。

    結局は、血糖値が高ければ、それを食事なり運動なり薬剤でコントロールし、肥満であれば減量する。
    こんな分類しなくとも、今までの治療となんら変わらないではないか。

    なーんて声が聞こえてきそうです。

    果たして、この分類を臨床に活かせるのか、それが気になります。

    • しらねのぞるば より:

      >しかしながら、実際の臨床には

      今 Ahlqvist博士の最新の論文を読みかけているのですが,まさにその疑問に答えています.

      https://diabetes.diabetesjournals.org/content/diabetes/69/10/2086.full.pdf

      従来のように「2型糖尿病は多種多様で何が起こるかわからない. どんな合併症がいつ起こるかは誰にもわからない」と考えて治療するのか,それとも「この患者は腎症リスクが高い」「あの患者は網膜症リスクがある」と予測・警戒しながら治療するのかの差を述べています.

      前者はよく言えば全方位警戒ですが,悪く言えば後追いの発想です.『合併症が出たらすぐに手を打とう. 何が起こるかわからないけど』
      ですから,何もない内は何もしないということになります.

      対して,Ahlqvist博士は,Predictableなものは 早期から,つまり合併症が顕在化していない段階で手を打てるメリットを強調しています.

  3. apple より:

    おはようございます
    appleです

    早々にお返事ありがとうございます

    初期電池は早めになくなると思うので、ボタン電池を買い置きして備えようと思います。