インスリン分泌の『なぜ?』を考える10

ここまでは,納先生のHPに掲載されている26人の健常人の5時間糖負荷試験(OGTT)を,新たな角度から見直してきました.つまり前回記事までは,納先生の測定データという『事実』だけを取り上げてきました.

妄想全開

しかし,あらかじめお断りしておきます.本記事以降は,まったく しらねのぞるばの妄想によるものであり,問われましても『エビデンス? ねーよそんなもん』としかお答えできません.
したがって,眉がベタベタになるくらい唾をつけてお読みくださるようお願い申し上げます.

(C) NHK

リサージュじゃないだろうか

突然,話が『電子回路』にトビます. なにしろ『妄想』なので,何でもアリです.

電子回路設計・開発で使われるオシロスコープという計測器があります.
眼には見えない電気信号の波形をグラフ表示してくれる測定器です.

真空管式オシロスコープ

現在ではFullデジタル方式で,表示も液晶ディスプレイですが,私がアマチュア無線少年だった時代には 米国Techtronicsのオシロスコープは,回路は全真空管方式,ディスプレイもブラウン管で,車が1台買えるほどの憧れの機器でした.

まず このような場合で;

入力信号をオシロスコープのX軸に,そして出力信号をY軸に入れて,波形のグラフを描かせたとします. ただ,この場合は 入力信号と出力信号はまったく同じですから,Y=X ,つまり単なる直線となります.

今度は この入出力の間にコンデンサが一つ入っている場合です.

コンデンサは 『蓄電器』ですので,入力された信号をいったん蓄えておき,それを 入力された通りに放出します.コンデンサの容量が適切な時には,上の図のように,波形の位相が90度ズレた信号が出力に現れます. sin関数とcos関数は90度ズレていますから,これは定義通りの円の方程式(x=cosθ、y=sinθ)となり,オシロスコープにはきれいな円形が描かれます.

もちろん,コンデンサの容量が中途半端な場合は,位相が90度ではなく『多少』ズレるだけなので,この場合は 円ではなく,楕円となります.

これらの波形をリサージュ図形といいます.2つの信号波形の位相のズレが一目でわかります.

そうです,この3つの血糖値-インスリン パターンを見た時,

最初に浮かんだ感想が,

これって リサージュじゃないか

と思ったのです.血糖値という外部からの刺激(=入力信号)と,インスリン分泌という結果(=出力信号)との間に 位相のズレが発生している,だから リサージュ図形を描くのではないかと.

単なる遅延と位相のズレとでは,何が違うのかという点ですが,単にβ細胞の活性が低くて,刺激に対してインスリン分泌が遅い/少ないというだけであれば,入力信号と出力信号が同じ波形になるとは限りません.同じ波形のままで ただ位相がずれるからこそ,絵に描いたようにきれいな円形のリサージュ波形を描くのです.

したがって,単なる遅延と言うよりは,入力信号(血糖値の上下)のパターンが忠実に時間遅れで再現されているという点で,位相がズレているだけではないかと考えたわけです.

[11]に続く

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    位相ズレのある2つを重ね合わせる(正規化された血糖値からインスリン値を引く)と上昇から下降になりさらにベースより一旦下がってベースに戻る波形が描けます。データによっては下降中に小さな山ができたり、実際の血糖値の動きと酷似しているように見えますね。非常に面白いです。

    • しらねのぞるば より:

      >さらにベースより一旦下がってベースに戻る波形が描けます。
      >データによっては下降中に小さな山ができたり、

      それこそ,Overshoot後に 典型的にみられる減衰振動のパターンですね.

      血糖値上昇という[入力信号]から,インスリン分泌という[出力信号],そしてその後の血糖値の動きを[Negative Feedback]と考えると,完全に電子回路と対比できるので,このアプローチに非常に惹かれています.