ブリットル型糖尿病[1]

日本糖尿病学会の最新の『糖尿病治療ガイド2022-2023』には;

糖尿病とはインスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝的疾患である

糖尿病治療ガイド2022-2023 p.14

と書いてあります.一言でいえば血糖値は インスリン(のみ)によって決まるということでしょう.しかしそれだけでは説明できない糖尿病があります.それがこのブリットル型糖尿病(Brittle Diabetes)です.

ブリットル型糖尿病とは

ブリットル Brittleとは『脆い(もろい)』ということです. 何が脆いのでしょうか? 答えはこのブリットル型糖尿病の血糖値の一例を見ればわかります.

血糖値の変動が『脆い』のです.食事や睡眠の影響だけでなく,まったく唐突に血糖値が変動,それも激しく変動するのです. 上の記録では,血糖値が50mg/dlを下回る危険な低血糖になったかと思うと,突如300mg/dlを越える高血糖が起こっています.これでは インスリンや血糖値を下げる薬を こわくて使えないでしょう.したがって Brittle型 糖尿病は,患者本人も主治医もヘトヘトに疲弊してしまいます.

ブリットル型糖尿病は,従来 1型糖尿病又は2型でもインスリン分泌がほとんど枯渇した患者において,インスリン注射量とタイミングが極端に不適合だったケースなどで発生するとされてきました. またその定義や発生機序が明確ではないので『ブリットル型糖尿病』というものは存在しない,もしくは 使うべきではないと解説している書物もあります.

たしかに 極度に不安定な血糖コントロールを示すこの症状を『特定の独立した病気ではない』ととらえることは現時点の医学では妥当な判断なのかもしれません.しかし『血糖値をうまく管理していないから そういうことになるのだ』と断じてしまうと,逆に 患者本人 または主治医,もしくは両者の責任であると難詰する印象を与えてしまうことも事実です.

なお,ここでいう『ブリットル型糖尿病』(『不安定型糖尿病』)とは,劇症1型糖尿病を発症した時のように一過性のものではなくて,上図のような急激な高血糖-低血糖を頻繁に繰り返す症状を指しています.

なぜこんなことが,どのようにして起こるのでしょうか.

[続く]

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