血糖値とHbA1cの測定精度[3]~肉屋の秤には国の検定がありますが

病院での測定といえども誤差ゼロはありえないというのが,前回の記事でした.

それでは,誤差があるのは仕方がないが,これ以上の誤差になってはいけない,つまり『精度管理』は,誰がどのようにして行っているのでしょうか?

量り売り

今でも商店街では よく見かけますが,肉屋や八百屋・魚屋では『量り売り』しているお店があります.
またスーパーでは,それらはパック売りされていますが,必ず 『内容量;360g 単価:gあたり48円』などと明示しています.

(C) Kohal さん

では,これらの量り売りで,お店がインチキをして,90gのものでも「100g」と表示するような秤を使っていたらどうでしょうか?
一目見てわかるほど量目が少なかったら別ですが,お客はいちいち持参した自分の秤で確認するわけではありません.

計量法が規制しています

大昔には,「量り売り」は天秤(てんびん)や竿秤(さおはかり)で行っていました,お若い方は見たこともないでしょう.これです.

竿秤
(C) tomoshop

竿には目盛りが打ってあり,所定の重さと釣り合えば竿は水平になります.しかしこの方法では,分銅の重さを軽いものにしておけば,いくらでも誤魔化しができたのです. したがって,そういうインチキは許さないということで,日本には分銅改所(ふんどうあらためしょ)というものがありました.江戸時代のことです. この分銅改所で,正しい重さの分銅だと認定されれば,今でいう『検定済印』が分銅に刻印してもらえました. お客は,その刻印を見て 信用できる商人かどうかを判定していたのです.

この制度はそのまま明治政府にも受け継がれ,明治時代制定の『度量衡法』,そして昭和の『計量法』という法律になります.計量法では,

取引若しくは証明に供される計量器は,原則として「検定」に合格しないと取引・証明に使うことはできない

と定められています.

ですから,現在 量り売りをしているお店で使われている秤は(それが電子天秤であっても),製造段階で国の検定を受けます.そこで正確な秤量性能があると認められたものには,このような「検定印」のシールが貼られています. (左は国家検定品,右は 承認を受けてメーカーが自主検定したもの)

また計量法では,検定済みの秤を使っていても,2年に1回は定期検査を受けて,その性能が変わっていないことを認証してもらう必要があります. 定期検査に合格した秤には,このシールが貼られます.

これらのシールがない秤を使って「量り売り」をすると 計量法違反となって処罰されます.

なお,ご家庭のキッチンスケールなどは,『取引若しくは証明に供される計量器』ではないので,計量法の適用外です.間違ってこれらを商取引に使わないように,家庭用であることを明示するこのシールが貼られています.

それでは,病院や医療検査機関で使われる測定器には,このように正しい測定値を示すことを国が検定しているのでしょうか?

[4]に続く

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