医学専門誌の食事療法の記事[2]

医学専門誌プラクティス 2019年 11・12月号に掲載された特集『糖尿病患者への個別化食事療法の実現に向けて』の後半です.

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4.高齢者への食事療法の最適化 [名古屋大学 梅垣宏行/葛谷雅文]

フレイル/サルコペニアの定義や病態を解説したうえで,高齢の糖尿病患者の適切な栄養摂取のありかたを述べています.意外だったのは,米国のACTS(Adult Changes in Thought Study)というデータベースの分析で,非糖尿病の人では血糖値が高くなるほど,フレイル(虚弱)になるリスクが高まるのに対して,糖尿病患者では平均血糖値=160を底として,それより高くても低くても フレイルリスクが高まる,つまりU字型となることです.この記事の最後でも,やはり高齢者には「多めのカロリー」「十分な蛋白質摂取」が必要であると結語しています.

なお 引用されている元の文献 “Glucose Levels and Risk of Frailty” を読んでみると,

(C) アメリカ老年医学会

上記のデータベースから,認知症のない65歳以上の1,848人(平均年齢:75~76歳)について,フレイルの有無[*1]と,過去5年間の空腹時血糖値の平均値との関係を調べていました.たしかに糖尿病患者[*2]では,フレイルのリスクは,過去5年の平均血糖値に対してU字型になっています.

[*1]フレイルの判定は,握力/歩行速度/活動度低下/低体重/倦怠感 を指標とする Friedの評価基準 を用いています.

[*2]この論文では『糖尿病患者』を「2種以上の糖尿病薬を服用している」と定義しています.

糖尿病と診断されていなくても,長期間 平均血糖値が高く推移すると,フレイルになるリスクが高いというのは頷けます.しかし,糖尿病患者では なぜ 平均血糖値に対してU字型のリスクになるのでしょうか? 著者は,この点について『糖尿病で投薬している高齢者に,過度に血糖コントロールを優先すると,かえって低血糖などの弊害が大きく,これがフレイルを招いているのだろう』と考察しています.

5.糖尿病性腎症における食事療法のありかた [滋賀医科大 荒木信一]

糖尿病性腎症の第1期(前期)~第5期(透析)における各病態とそれに対応した食事基準の解説です.さらに高齢でサルコペニア併発している患者の蛋白質摂取管理を解説しています.

6.1型糖尿病患者への食事療法:カーボカウントUpdate [徳島大学 黒田暁生/松久宗英]

ほぼ江部先生のブログで報告した, 黒田先生(=ご自身も1型糖尿病歴 35年)の講演と同じなので割愛します.

感想

最近は医学専門誌においても,糖質制限食の是非については,かつてのようにタブーではなくて おおっぴらに論議されるようになっています.

ただ今までは賛成であれ反対であれ,それは著者の個人的意見という立場での表明がほとんどでした. しかし,今回のプラクティス誌のように,糖尿病学会の理事であり,「食品交換表」編集委員会委員長でもある綿田先生が,

『糖質制限食も選択されるべき治療法の一つ』

と明言された意義は大きいと思います.

次回は,もう一つの医学専門誌『公衆衛生』に掲載された糖質制限食の特集記事を紹介します.

[3]に続く

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